デュタステリドは、男性ホルモンを脱毛に関わる形へ変える5α還元酵素を、I型とII型の両方で抑える飲み薬です。国内では2015年に男性型脱毛症の治療薬として承認されました。

フィナステリドと比べた試験では、24週で毛髪数がより増えたと報告されています。ただ、誰にでも同じ変化が起きるわけではありません。

効き方には個人差があり、性機能に関する副作用やPSA値の低下といった注意点も伴います。発毛にはたらく仕組み、フィナステリドとの違い、切り替えが話題に上がる場面、副作用の考え方までを順に整理します。

目次

デュタステリドが発毛にはたらく仕組みと2種類の5α還元酵素

デュタステリドは、テストステロンを脱毛に関わるDHTへ変える酵素を、I型とII型の両方でブロックします。II型だけを抑えるフィナステリドより、血液中のDHTを深く下げると報告されています。

抜け毛が進む引き金になるDHTという男性ホルモン

男性型脱毛症では、テストステロンが5α還元酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)へ変わり、前頭部や頭頂部の毛包にはたらきかけます。その影響で髪が太く育つ成長期が短くなり、細く短い毛の割合が増えていきます。

毛包そのものが消えてしまうわけではなく、産毛のような状態でとどまる毛が増えるために、地肌が透けて見えるようになります。

後頭部や側頭部の毛が残りやすいのは、部位ごとにホルモンへの反応が違うからです。前頭部の毛包ではDHTを作る酵素と、その受け皿になる受容体がどちらも多いと、頭皮の生検を用いた研究が示しました。

I型とII型で分布が異なる5α還元酵素

5α還元酵素にはI型とII型の2種類があり、体の中での分布も違っており、II型は毛乳頭や前立腺に、I型は皮脂腺や肝臓に多く分布すると分かっています。

フィナステリドが主に抑えるのはII型のほうです。頭皮の毛包の周囲にはI型もはたらいているため、両方を抑える意味があるのではないかと検討されてきました。

酵素の型主に分布する場所抑える薬
I型皮脂腺、肝臓、頭皮の皮脂腺の周囲デュタステリド
II型毛乳頭、毛包の外毛根鞘、前立腺デュタステリド、フィナステリド
両方の合計体内で作られるDHTの供給源二重に抑えるほど血中DHTは下がる

男性型脱毛症の発症と治療には、I型とII型のどちらも関わると、2006年の比較試験を報告した論文が述べています。二重に抑えるという発想は、こうした知見から生まれました。

血液中のDHTはどこまで下がるのか

前立腺肥大症の男性399人が参加した24週の試験では、デュタステリド0.5mgで血中DHTが平均94.7%下がりました。フィナステリド5mgでの低下は平均70.8%で、人による差も大きかったと報告されています。

血液の値と頭皮の毛包の中で起きている変化は完全には一致しませんが、下げ幅の違いは毛髪数の差を説明する手がかりの一つになります。

実際の変化は毛包の状態や年齢、進行の度合いにも左右されるので、数値が大きいほど髪が増えると単純に読み替えるのは避けたいところです。

デュタステリドの効果はいつごろ現れるのか

臨床試験の多くは24週から52週で判定しており、飲み始めて1〜2か月では効き目を判断できません。半年をひと区切りに、写真と毛髪数で確かめる進め方が一般的です。

服用からの時期体の中で起きていること確かめやすい材料
1〜3か月血中DHTが下がり、毛周期が入れ替わる抜け毛の量の変化
4〜6か月細い毛が太く育ち始めたという報告がある同じ条件で撮った写真
12か月前後変化がゆるやかに続く時期毛髪数と医師の評価

髪の生え替わりの周期が待ち時間を決める

髪は成長期・退行期・休止期をくり返しており、1本が伸びる成長期は数年におよぶため、薬でDHTを下げても、すでに休止期へ入った毛がすぐ伸び始めるわけではありません。

抜けた後に新しい毛が生えそろい、太さを取り戻すまでには数か月かかるので、効き目の判定にも半年前後の時間が必要になります。

日本人男性120人に52週間投与した試験でも、毛髪数と見た目の評価は時間をかけて改善しました。焦らず続けられるかどうかが、結果を左右する要素になります。

飲み始めに抜け毛が増える場合がある

服用を始めて数週間のうちに、抜け毛が一時的に増えたと感じる人がいます。休止期に入っていた毛が新しい毛に押し出される時期にあたり、多くは数か月で落ち着くと説明されています。

驚いて自己判断で中断すると、せっかくの評価期間が途切れてしまうため、気になるときは次の診察を待たず、処方した医師へ相談してください。

同じ条件で撮った写真が効き目の判断を支える

鏡を毎日のぞいても、少しずつの変化は分かりません。臨床試験が定点写真と毛髪数を用いるのは、主観のぶれを避けるためです。

自宅で記録するなら、照明・角度・髪の乾き具合をそろえ、1か月ごとに同じ場所を撮っておくと比べやすくなります。前髪を上げた正面と、真上からの2枚があれば十分でしょう。

受診のたびに写真を見せると、医師の評価と自分の実感のずれも埋まります。判断材料が増えるほど、続けるか見直すかの相談も具体的になります。

デュタステリドとフィナステリドの違いはどこにあるのか

2剤の違いは、抑える酵素の範囲、血中DHTの下がり方、体内に残る時間、そして国内で承認された用量に整理できます。どちらが上かではなく、性質の違いとして押さえておくと選択の相談がしやすくなります。

抑える酵素の範囲とDHTの下がり方

フィナステリドはII型を選択的に抑え、デュタステリドはI型とII型の両方を抑えるため、血中DHTの低下率は前者が7割前後、後者は9割を超える水準です。

この差が毛髪数の差につながると考えられていますが、下げ幅が大きいほど副作用も比例して増えるとは限りません。24週の比較試験では、有害事象の数と程度は群の間で大きく変わらなかったと報告されています。

半減期の長さが中止後にも響く

フィナステリドの血中半減期は数時間ですが、デュタステリドは定常状態で約5週間と長く、飲むのをやめても成分は数か月間残ります。効き目が安定しやすい反面、副作用が出たときに素早く抜けない側面もあります。

飲み忘れが1日あってもDHTが急に戻りにくいのはこの性質の裏返しですが、自己判断で間隔を空ける服用は、医師の指示から外れるため勧められません。

献血が制限される期間にも、この長さが反映されています。日本赤十字社は、フィナステリドを中止して1か月、デュタステリドは中止して6か月のあいだ献血できないと定めています。

国内で承認されている用量と飲み方

デュタステリドは2015年に男性型脱毛症への効能が承認され、1日1回0.1mgから始め、必要に応じて0.5mgまで増やす用法です。フィナステリドは1日1回0.2mgが基本で、1mgを上限に調整します。

どちらも医師の診察と処方が必要な医療用医薬品で、公的医療保険の対象にはならず、用量の変更も自分では決めずに、経過を見ている医師と相談したうえで進めます。

比べる項目デュタステリドフィナステリド
抑える酵素I型とII型主にII型
血中DHTの低下0.5mgで約95%5mgで約71%
血中半減期定常状態で約5週間数時間
国内での承認2015年2005年
1日の用量0.1mg、必要に応じ0.5mg0.2mg、上限1mg

比較試験でデュタステリドの効き目はどう報告されているか

複数の試験で24週時点の毛髪数はデュタステリドのほうが多く増えたと報告されていますが、観察期間は短く、平均値の差である点を踏まえて読む必要があります。

917人が参加した24週の比較試験

20歳から50歳の男性917人を対象に、デュタステリド3用量、フィナステリド1mg、プラセボを比べた試験があります。24週後、デュタステリド0.5mgは直径2.54cmの範囲の毛髪数と毛の太さで、フィナステリドとプラセボの双方を有意に上回りました。

前方から撮影した写真をもとにした専門家の評価でも同じ方向の結果が出ており、有害事象の件数と重さは、いずれの群でも似た水準にとどまりました。

用量によって反応の大きさが変わる

この試験では用量が上がるほど毛髪数と毛の太さの増加も大きくなり、低用量では差がはっきりせず、0.5mgで明確な違いが見えたという流れです。

韓国の男性153人にデュタステリド0.5mgを6か月投与した試験では、1平方cmあたりの毛髪数が12.2本増え、プラセボの4.7本を上回りました。用量と反応の関係は、複数の集団で確かめられています。

ただ、用量を上げれば上げるほど良いという単純な話でもなく、国内で承認された範囲を超える使い方は、安全性のデータが乏しく推奨されません。

メタ解析がまとめた3試験の結果

2剤を直接比べた3試験、計576人をまとめたメタ解析では、総毛髪数の変化量に平均28.57本の差があり、デュタステリド側が上回りました。性欲の変化、勃起障害、射精障害の頻度には、統計的な差が出ませんでした。

インドで行われた無作為化試験でも、新しく生えた毛の増加はデュタステリド群のほうが多いと報告されています。副作用の傾向は両群で似ており、性機能に関する訴えは可逆的だったと記載されました。

数字を読むときに気をつけたい点

報告されている数字はいずれも集団の平均であり、平均が上でも、個々の患者で必ず良い結果になるとは限りません。

24週や52週という観察期間は、10年単位で付き合う脱毛症からすれば短い区切りにすぎません。長期に飲み続けたときの利益と負担は、まだデータが積み上がっている途中です。

日本皮膚科学会のガイドラインは、フィナステリド1mgとデュタステリド0.5mgのどちらも男性型脱毛症に推奨しています。優劣を一律に決めず、状態に応じて選ぶ姿勢が現場では取られています。

報告比べた内容報告された結果
Gubelin Harcha 20140.5mgとフィナステリド1mg、24週、917人毛髪数と毛の太さが有意に増加
Eun 20100.5mgとプラセボ、6か月、153人1平方cmあたり12.2本増、プラセボは4.7本
Zhou 20193試験576人をまとめたメタ解析総毛髪数の差は平均28.57本
Tsunemi 2016日本人120人に52週間投与毛髪数と外観が改善、17%に薬剤関連の有害事象

デュタステリドへの切り替えが話題に上がる場面

切り替えが検討されるのは、フィナステリドを十分な期間続けても変化が乏しいときです。ただし変更を決める前に、飲み忘れや別の脱毛要因が隠れていないかを確かめる作業が先に来ます。

1年続けても手応えが乏しいとき

フィナステリドは3か月で変化が出る人もいますが、判定には通常6か月の連日投与が必要とされています。1年近く続けて写真上の変化も乏しいなら、医師が次の選択肢を提案する場面です。

逆に、少しずつでも前進しているなら急いで変える理由はなく、維持できている状態も、脱毛が進む自然経過と比べれば意味のある結果です。

服薬状況と別の要因の確認が先に来る

効果が出ない背景に、飲み忘れの多さや服用期間の短さが潜んでいる場合があります。甲状腺の病気、鉄不足、極端な減量、強いストレスによる脱毛が重なっているケースも珍しくありません。

薬を変える前にこうした背景を洗い出すほうが近道で、診察の時間は限られるので、伝えたい情報を事前に整理しておくと話が早く進みます。

  • 服用を始めた時期と、飲み忘れのおおよその頻度
  • 前髪と頭頂部を同条件で撮った写真
  • ほかに飲んでいる薬とサプリメント
  • 健診で指摘された肝機能や貧血の数値
  • 減量、睡眠不足、生活の変化があった時期

切り替えるときの進め方と経過の見方

切り替えは、フィナステリドをやめてデュタステリドへ置き換える形が基本です。2剤を同時に飲む使い方は国内で認められておらず、上乗せの利益を示すデータもそろっていません。

変更後も、判定にはやはり半年前後の時間が要ります。切り替えた月を記録し、写真の比較を続けると、医師の評価と突き合わせやすくなります。

体質に合わないと感じたときは我慢せず早めに申し出るほうが安全で、合わない薬を続ける判断も、戻す判断も診察の中で決まります。

デュタステリドの副作用と服用前に確かめたい点

効果と副作用は、いつでもセットで検討する対象です。性機能に関する訴え、PSA値の低下、成分が長く残る性質の3つは、飲み始める前に知っておきたい要点になります。

注意したい項目報告されている内容受診時の対応
性機能に関する変化性欲減退、勃起障害、射精障害の報告程度と時期を医師へ伝える
PSA値服用中はおおむね半分程度まで下がる検査前に服用中と申告する
成分が残る期間中止後も数か月は体内に残る献血は中止から6か月あける
肝機能肝障害のある人では慎重に扱う健診結果と既往を申告する

性機能に関する報告をどう読むか

5α還元酵素を抑える薬では、性欲の低下や勃起障害、射精量の減少が報告されています。日本人120人の52週試験では、薬剤との関連が否定できない有害事象が17%に見られ、多くは軽度でした。

フィナステリドと比べたメタ解析では、これらの頻度に統計的な差が出ませんでしたが、頻度が同程度でも、自分に起きるかどうかは別の話だと考えて備えるほうが安心です。

気になる変化が出たら、次の診察まで抱え込まないほうがよいでしょう。中止や減量の判断は医師が行い、代わりの選択肢も一緒に検討します。

PSA値が下がるため検査前に申告する

5α還元酵素阻害薬を飲んでいると、前立腺の検査に使うPSA値が半分程度まで下がります。素の数値のまま読むと、前立腺の病気を見落とす危険が生まれます。

健診や泌尿器科でPSAを測るときに服用中である旨を必ず伝えておくと、医師は下がる分を織り込んだうえで、変化の推移から判断できます。

低下の度合いは薬によっても違い、デュタステリドのほうが下げ幅は大きいと報告されています。40代以降で検診を受ける機会が増える世代ほど、申告の習慣が役に立ちます。

体内に長く残る性質と献血の制限

デュタステリドは服用をやめた後も数か月にわたって血液中に残るため、日本赤十字社は、中止から6か月のあいだ献血できないと定めています。

フィナステリドの制限は中止後1か月なので6倍の開きがあり、定期的に献血している人は、飲み始める前に主治医へ伝えておくと後で困りません。

服用の前に相談が必要な人

肝機能に問題を指摘されている人、ほかの薬を複数飲んでいる人は、開始前の相談が欠かせません。持病や既往歴によっては、別の方法を選ぶ判断になる場合もあります。

この薬は成人男性の男性型脱毛症に限って承認されており、対象外の人が服用してよい薬ではありません。家族が同じ悩みを持っていても、処方された薬を分け合う使い方は避けます。

デュタステリドを続けるときの通院と自己判断を避けたい理由

この薬は医師の処方が要る医療用医薬品で、定期的な受診とセットで使います。個人輸入や自己判断での増減は、効果の判定を難しくするうえに安全面の負担も抱え込みます。

診察と処方が前提になる薬

脱毛の原因は男性型脱毛症だけではなく、円形脱毛症や皮膚の病気、全身の病気が隠れている場合もあります。診察では頭皮の所見や経過を確かめ、必要に応じて血液検査も行います。

診断がずれたまま薬を飲んでも期待した変化は起きず、飲み始める前の見立てこそ、結果を大きく左右する部分です。

個人輸入した製品で起こりうる問題

海外から個人輸入した製品には、成分量が表示と違う品や偽造品が混じるおそれがあり、健康被害が出ても国内の救済制度は使えません。

副作用が出たときに相談できる医師がいない状況も大きな不利になるので、国内で承認された薬を、診察を受けたうえで使うほうが安全です。

自己判断でやめたときに起きること

服用をやめるとDHTは元の水準へ戻り、時間をかけて脱毛が再び進みます。維持のために飲み続ける薬である点は、フィナステリドと共通します。

ただ、費用や副作用、生活の変化を理由に中止を考える場面は誰にでも訪れるので、やめ方や次の手を含めて診察の中で相談するほうが、結果的に無駄がありません。

生活の見直しを並走させる

薬だけに任せるより、頭皮の環境と生活習慣を整えたほうが土台は安定します。派手さはありませんが、続けやすい工夫ほど長い目で効いてきます。

  • 睡眠時間を6〜7時間確保する
  • 皮脂を落としすぎない洗髪
  • たんぱく質と鉄、亜鉛を含む食事
  • 禁煙と飲酒量の見直し
  • 頭皮を強く引っぱる髪型を避ける

極端な減量や偏った食事は、それ自体が抜け毛の引き金になるため、薬の効き目を正しく判定するうえでも、土台を崩さない生活が支えになります。

よくある質問

Q
デュタステリドの効果はいつごろ判断できますか?
A

臨床試験の多くは24週から52週で評価しており、半年を一区切りに見るのが一般的です。飲み始めて1〜2か月の段階では、増減の判断はできません。

同じ条件で撮った写真を残しておくと、診察のときに医師の評価と突き合わせやすくなるので、焦らず経過を積み上げる姿勢が役に立ちます。

Q
デュタステリドとフィナステリドは併用できますか?
A

同じ系統の薬を重ねて飲む使い方は国内で認められておらず、上乗せの利益を示すデータもありません。切り替える場合は、一方をやめてもう一方へ置き換える形になります。

変更するかどうかは、これまでの経過や副作用の有無を踏まえて医師が判断します。自分で組み合わせを決めるのは避けてください。

Q
デュタステリドをやめると髪はどうなりますか?
A

服用をやめると血中のDHTは元の水準へ戻り、時間をかけて脱毛が再び進みます。維持のために飲み続ける薬だと理解しておくと、開始前の判断がしやすくなります。

ただし成分は数か月かけて抜けていくため、中止直後に急変するわけではなく、やめたい事情があるときは、代わりの方法も含めて医師と相談してみましょう。

Q
デュタステリドを飲んでいるとPSA検査に影響しますか?
A

服用中はPSA値が半分程度まで下がるため、素の数値のまま読むと判断を誤るおそれがあります。健診や泌尿器科で採血を受けるときは、服用中である旨を伝えます。

医師は低下する分を織り込んで数値の推移から前立腺の状態を評価するので、申告さえしておけば、検査そのものを避ける必要はありません。

Q
デュタステリドは市販薬として買えますか?
A

医師の処方が必要な医療用医薬品なので薬局の店頭では買えず、海外からの個人輸入では、成分量の違う品や偽造品に当たる危険がつきまといます。

健康被害が起きても国内の救済制度は使えず、相談できる医師もいない状況に置かれるため、脱毛の原因を確かめる意味でも、まず診察を受ける流れが安全です。

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