急激に髪が抜ける円形脱毛症と、徐々に進行するAGA。これらは見た目だけでなく、体内で起きている事象が根本から異なります。

円形脱毛症は免疫系が自身の毛包を誤って攻撃する自己免疫反応が原因です。一方でAGAは特定の男性ホルモンが髪の成長を妨げることで進行します。

本記事では、この二つの脱毛症における発生の理屈や進行パターンの違い、そして適切な対処法を専門的な視点から詳しくひも解きます。

自分に起きた変化の正体を知ることが、健やかな髪を取り戻すための第一歩となります。原因に応じた正しいケアを選択しましょう。

円形脱毛症とAGAの根本的な違いを理解する

円形脱毛症とAGAの決定的な違いは、髪を失わせる攻撃の主体が何かという点に集約されます。自己免疫疾患とホルモン変化という、全く異なる経路を辿って症状が現れます。

円形脱毛症は本来外敵から体を守るべき免疫細胞が、自分の髪を敵と見なして攻撃を仕掛ける現象です。急激な炎症によって、毛根が活動を停止せざるを得なくなります。

これとは対照的に、AGAは男性ホルモンの影響によって髪の寿命そのものが短縮される現象です。免疫系の暴走ではなく、遺伝的な要因に基づく生理的な変化として進行します。

自己免疫疾患としての円形脱毛症

円形脱毛症の正体は、リンパ球と呼ばれる免疫細胞が、成長期にある元気な毛包を異物と誤認して攻撃を仕掛けることで発生する炎症反応です。

通常、毛細血管の周囲にある毛包は、免疫系からの攻撃を受けないようなバリア機能を備えています。何らかのきっかけでこの機能が破綻し、集中攻撃を浴びることで髪が抜けます。

この反応は非常に急激であり、健康な髪が数日のうちに境界線のはっきりした円形状に抜け落ちるのが特徴です。体内の免疫システムが乱れている状態と言えます。

そのため、局所的な問題というよりは、全身の免疫バランスが関与している側面が強いものです。自己免疫が正常に機能しなくなることで、髪の毛が犠牲になってしまいます。

男性ホルモンが主導するAGAの性質

AGA(男性型脱毛症)は、特定の男性ホルモンが毛乳頭細胞にある受容体と結合し、髪の成長を止めなさいという信号を出すことで進行します。

この影響を強く受けると、本来数年かけて成長するはずの髪が、わずか数ヶ月から一年程度で抜け落ちるようになります。細く短い毛ばかりが目立つようになるのはこのためです。

これは免疫系の暴走ではなく、ホルモン感受性と遺伝による生理的な変化です。急に抜けるのではなく、数年という長い年月をかけて少しずつ髪の密度が低下していきます。

このような緩やかな変化は、日常生活の中で気づきにくいことが多く、ある程度進行してから自覚するケースが目立ちます。ホルモンの影響は特定の部位に限定されます。

発症のスピードと範囲の違い

発症のスピード感において、両者は対極に位置します。円形脱毛症はある朝突然気づくことが多く、触れるだけで束になって抜けるような激しい進行を見せる場合があります。

範囲も後頭部や側頭部など、場所を選ばずに発生します。これまでの健康状態に関わらず、突如として特定のエリアが無毛状態になるため、精神的なショックも大きくなりがちです。

反対にAGAは、鏡を見ても昨日の自分との違いが判別できないほど緩やかに進行します。また、AGAには決まった形があり、額の生え際や頭頂部から薄くなっていくのが通例です。

後頭部の髪は男性ホルモンの影響を受けにくいため、最後まで残りやすいという点も特有の性質です。このように、抜け方の形式を見ることである程度の推測が可能になります。

主要な相違点の整理

項目円形脱毛症AGA
主な原因自己免疫反応男性ホルモン(DHT)
進行速度非常に急激極めて緩やか
発生の範囲頭部全体にランダム生え際や頭頂部限定

こうした差異が生じるのは、体内のどのシステムがエラーを起こしているかが異なるからです。自身の状況がどちらに当てはまるか、鏡の前で慎重に観察してみることが大切です。

円形脱毛症を引き起こす自己免疫の正体

円形脱毛症における脱毛は、体内の守護者であるはずのTリンパ球が毛包の組織を破壊しようとすることで発生します。本来の役割を忘れ、自らを傷つけてしまう悲しい誤作動です。

本来、毛包は免疫特権と呼ばれる特殊な仕組みを持っており、免疫細胞からの攻撃を回避できるようになっています。このバリアが強固であれば、髪の毛は安全に成長を続けられます。

しかし、ストレスや感染症などの要因が重なり、この特権が崩壊すると、Tリンパ球が毛根を包囲して激しい炎症を引き起こします。これが、痛みがないまま髪が抜ける理由です。

リンパ球が毛包を攻撃する仕組み

毛根の周辺には、通常であれば攻撃を加えないTリンパ球が待機していますが、何らかのスイッチが入ると、これらが一斉に活性化して毛包を異物として認識します。

特にCD8陽性T細胞と呼ばれる細胞が中心的な役割を果たし、毛包の細胞を直接傷つけます。この攻撃によって、髪の毛を作る工場である毛母細胞の活動が強制終了させられます。

この過程を通じて、まだ成長の途中であった髪が無理やり引き抜かれるような形で脱落します。毛根部分に急激なダメージが加わり、髪の製造ラインが完全にストップするわけです。

このとき、毛包自体が完全に消滅するわけではなく、あくまで休止に近い状態に追い込まれています。適切な処置によって炎症が治まれば、再び髪が作られる可能性が十分にあります。

自己免疫反応に関与する主な要素

  • 毛根を敵と見なすTリンパ球の活性化
  • 外部刺激による免疫バリアの機能不全
  • 毛母細胞の活動を阻害する炎症性物質

遺伝的背景と環境因子の相関

自己免疫の暴走がなぜ特定の人に起きるのかについては、遺伝的な素因が深く関わっていると考えられています。特定のHLA型を持つ人は、発症しやすい傾向にあるとの研究があります。

しかし、遺伝子だけで全てが決まるわけではありません。肉体的な疲労や精神的な強いプレッシャー、あるいはウイルス感染が引き金となり、眠っていた性質が目覚めることがあります。

環境因子が火種となり、遺伝的な素因という燃料に火をつけるような関係性です。自分自身の体質を知るとともに、過度な負荷を避ける生活を心がけることが、発症の抑止に繋がります。

特に、大きな病気をした直後や環境の変化が激しい時期には注意が必要です。体力が低下しているタイミングで、免疫システムはエラーを起こしやすくなる性質を持っています。

全身症状との関連性

円形脱毛症は単なる皮膚のトラブルにとどまらず、他の自己免疫疾患を併発している場合があります。体全体のバランスが崩れているサインとして捉える視点も重要です。

例えば、甲状腺疾患や尋常性白斑などは、患者において比較的高い頻度で見られる合併症です。これは、特定の部位だけでなく、体全体の免疫系が敏感になっていることを示唆しています。

髪の毛の変化だけでなく、爪に小さな凹凸ができていないか、肌に異常がないかといった全身のサインに目を向けましょう。こうした小さな変化が、原因の特定に大きく貢献します。

全身の健康状態を底上げすることが、結果として頭皮の回復を早めることにも繋がります。休息を十分に取り、バランスの取れた生活を送ることが、免疫の安定には不可欠です。

AGAを進行させる男性ホルモンの影響力

AGAの進行において主役となるのは、テストステロンから変化したジヒドロテストステロン(DHT)です。男性らしい体を作るホルモンが、頭髪には牙を向いてしまいます。

このホルモンは頭皮の毛乳頭細胞においては、髪の成長を阻害する強力なメッセンジャーとして働いてしまいます。急激な破壊ではなく、時間をかけてじわじわと毛包を小さくします。

この働きによって、太く長い硬毛が、産毛のような軟毛へと置き換わっていくのが、薄毛の正体です。髪を育てる力が徐々に奪われ、最終的には地肌が露出する事態を招きます。

ジヒドロテストステロンの受容体結合

血液中を流れるテストステロンが頭皮に到達すると、5αリダクターゼという酵素の働きによってDHTへと変換されます。これが薄毛の始まりを告げる合図となります。

このDHTが毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体と結合することで、髪の成長を止める信号が発生します。受容体の感度が高い人ほど、この信号を強く受け取ってしまいます。

免疫細胞による直接的な細胞死ではなく、あくまで成長命令の書き換えが行われているという点が理屈上の特徴です。プログラム自体が変更され、髪を伸ばさない設定に書き換わります。

この設定変更は一度定着すると、自然に元の状態へ戻ることは困難です。ホルモンの影響を断ち切るための介入を行わない限り、髪の毛は次第にその姿を消していくことになります。

AGAの発生を左右する要因

要因役割影響の強さ
5αリダクターゼホルモン変換の促進遺伝により個人差大
男性ホルモン受容体DHT信号の受取感受性が高いと進行
頭皮の血流栄養供給の維持悪化すると矮小化加速

毛周期が短縮する理由

髪の毛には成長期、退行期、休止期というサイクルがあり、通常であれば成長期は2年から6年ほど続きます。この期間が長いほど、髪は太く丈夫に育つことができます。

しかし、DHTの影響を強く受けた毛包では、この成長期が数ヶ月から一年にまで極端に短縮されます。髪が十分に育つ前に抜けてしまうため、頭皮のボリュームが激減します。

この短縮されたサイクルが繰り返されるうちに、毛包自体がどんどん小さくなり、最終的には目に見えないほどの細い毛しか生えなくなります。これがいわゆる毛包の矮小化です。

一度縮小しきった毛包を元の大きさに戻すには、多大な労力が必要になります。進行の初期段階で変化に気づき、適切な対処を始めることが、髪の寿命を延ばす鍵となります。

進行を促す生活習慣の要因

ホルモンバランスが主原因であるとはいえ、生活習慣がその進行に拍車をかけることは否定できません。土壌が荒れていれば、種をまいても立派な作物は育たないのと同じ理屈です。

例えば、過度な脂質の摂取や喫煙、睡眠不足などは、頭皮の血流を悪化させ、毛包への栄養供給を阻害します。弱っている毛細血管は、髪に必要な酸素を運ぶことができなくなります。

また、ストレスによって自律神経が乱れると、ホルモンバランスがさらに崩れます。この結果としてDHTの影響がより顕著に出てしまう可能性があり、悪循環に陥りやすくなります。

遺伝的な運命を完全に変えることは難しくても、その速度を緩める努力は可能です。日々の暮らしを見直すことで、ホルモンの攻撃に負けない強い頭皮環境を作っていきましょう。

抜け方のパターンで見分ける脱毛症の種類

自身がどちらの脱毛症であるかを判断する最も分かりやすい指標は、髪が抜ける形と場所です。鏡を見る習慣を持ち、細かな変化をキャッチする感度を磨くことが重要です。

円形脱毛症はその名の通り、コインのような円形や楕円形のハゲが前触れなく現れます。一方でAGAは、特定のパターンに沿って広範囲に薄くなっていく傾向があります。

これらを見分けることで、皮膚科へ行くべきか、薄毛専門のクリニックへ行くべきかの指針が得られます。正しい入り口を見つけることが、最短での回復へと繋がっていくはずです。

境界線がはっきりした円形脱毛

円形脱毛症の最大の特徴は、脱毛している部分と、髪がしっかり生えている部分の境界が非常に明瞭であることです。まるでカミソリで剃ったかのような急激な変化が見られます。

脱毛部は滑らかな肌理が見えるほどツルツルになることが多く、その周辺の髪を軽く引っ張ると簡単に抜けることがあります。これは現在進行形で免疫攻撃が続いている証拠です。

単発の円形だけでなく、複数の箇所が繋がって地図のような形になることもあります。また、髪が全体的にまばらに抜けるタイプも存在しますが、いずれも短期間での変化が共通項です。

この急速な進行は、自分の体が発している緊急アラートでもあります。単なる薄毛対策ではなく、医学的な治療を必要とする炎症状態であることを認識しなければなりません。

生え際と頭頂部から薄くなるAGA

AGAの場合、円形脱毛症のように局所がツルツルになることは稀です。まずは髪のコシがなくなる、地肌が透けて見えるといった緩やかな変化から始まっていきます。

M字型に生え際が後退していく、あるいは頭頂部のつむじ周辺が広がっていくという、決まった様式に従って進行します。左右対称に近い形で進むのも、この症状の大きな特徴です。

また、AGAで抜ける毛は、細くて短いことが多いものです。成長期が短縮されているため、寿命を迎える前に抜けてしまった毛が枕元などに多く見られるようになります。

抜けた毛の根元を観察し、以前よりも細くなっていないかを確認してください。もし細く尖ったような毛が増えているなら、それは男性ホルモンの影響が強まっているサインです。

症状を比較するためのチェックポイント

  • 脱毛箇所の境界線が明確か、それとも曖昧か
  • 抜けた毛がしっかり太いか、あるいは細く未熟か
  • 抜けるスピードは日単位か、それとも年単位か

併発する可能性と判断基準

男性の中には、AGAの治療中に突然円形脱毛症を発症する人もいます。AGAで全体的にボリュームが減っているところに、局所的な抜け毛が加わると、判断が非常に難しくなります。

見分けの基準としては、脱毛部の皮膚が周囲に比べて陥没しているように見える場合は円形脱毛症の疑いが強まります。これは炎症によって一時的に組織が萎縮するためです。

逆に、額の広がりやつむじの薄さが特定の型に沿って進んでいるのであれば、AGAの影響が支配的です。不安な場合は、スマートフォンのカメラで定期的に撮影しておくと便利です。

その変化を医師に見せることで、診断の精度は飛躍的に高まります。記録を残すことは、あやふやな記憶に頼るよりも遥かに確実な証拠となり、適切な治療の選択を助けてくれます。

診断と検査における専門的な手順

原因を特定するためには、専門機関での正確な診断が欠かせません。自己判断で間違った薬を使い、症状を悪化させてしまうことだけは避けなければならない事態です。

見た目だけで判断せず、拡大鏡を用いた観察や血液検査など、科学的な根拠に基づいた評価を行いましょう。適切な検査を受けることで、心の不安も解消されるはずです。

円形脱毛症であれば炎症を抑えることが先決ですし、AGAであればホルモンを制御することが最優先となります。ここでは病院で行われる主な検査の内容を具体的に解説します。

皮膚科でのダーモスコピー検査

ダーモスコピーは、特殊な拡大鏡を使って頭皮や毛孔の状態を詳細に観察する検査です。肉眼では見えない微細な変化を捉えることで、原因を確実に絞り込んでいきます。

円形脱毛症の場合、感嘆符毛と呼ばれる、根元が細く先端が太い特徴的な毛が見つかることがあります。これは免疫攻撃によって毛根が急激に萎縮してしまった動かぬ証拠です。

一方AGAでは、一本の毛穴から生えている毛の数が減っていたり、毛の太さがバラバラになっていたりする状況が確認されます。これを毛髪の多様性と呼び、AGA診断の決め手になります。

視覚的な違いによって、現在どのような異常が起きているのかを瞬時に判別できます。検査自体に痛みはなく、短時間で終わるため、まずはこの検査を受けることが推奨されます。

専門外来で行われる主な検査項目

  • 頭皮の拡大観察(ダーモスコピー)
  • 全身の健康状態を測る血液検査
  • 抜けた毛の形状を確認する毛根検査

血液検査で除外すべき疾患

円形脱毛症が疑われる場合、血液検査によって他の自己免疫疾患が隠れていないかを確認することがあります。甲状腺機能の異常などは、抜け毛の隠れた要因になり得ます。

また、梅毒などの感染症によって髪が抜けるケースもあり、これらとの差別化も重要です。AGAにおいても、内服薬の適応を判断するために肝機能などを調べることがあります。

血液検査は、表面的な症状の裏にある体の叫びを聞き取るための大切な工程です。数値として客観的に健康状態を把握することで、より安全な治療方針を立てることが可能になります。

副作用のリスクを最小限に抑えつつ、最大限の効果を得るためには、こうした事前のデータ収集が欠かせません。納得感のある治療を受けるためにも、検査は積極的に受けましょう。

毛髪の形状観察による特定

実際に抜けた毛を引き抜いて観察するトリコグラム検査という手法も有効です。毛根の形状を見ることで、それが寿命で抜けたのか、攻撃を受けて抜けたのかを判定します。

円形脱毛症では成長期の毛が破壊されて抜けるため、毛根が歪な形をしています。AGAでは、ほとんどが正常な休止期毛の形をしていますが、そのサイズ自体が極端に小さいのが特徴です。

ミクロの視点から毛根の健康状態を評価することが、正しい治療方針の決定に重要です。髪の毛一本一本に刻まれた情報を読み解くことで、真の解決策が見えてくるはずです。

もし自分で抜けた毛を観察する場合は、市販のルーペなどを使ってみるのも一つの手です。しかし、最終的な判定は経験豊富な専門医に委ねるのが、最も確実で安全な道と言えます。

治療アプローチにおける決定的な方向性の差

原因が違えば、治療法も正反対になります。円形脱毛症の治療は、暴走している免疫を鎮めることが主眼となり、炎症をいかに早く抑え込むかが勝負の分かれ目となります。

対してAGAの治療は、男性ホルモンの悪影響をブロックし、成長期を元の長さに戻すことが目的となります。この戦略の違いを理解せずにケアを行うのは、非常に非効率的です。

それぞれの症状に適した手法を選択することが、失った髪を取り戻すための最短ルートです。ここでは、具体的にどのような治療が行われるのかを比較していきます。

免疫抑制と炎症緩和を狙う治療

円形脱毛症においては、毛包を攻撃しているリンパ球の活動を抑え込む必要があります。軽症の場合はステロイドの外用薬や注入療法が行われ、炎症部位に直接働きかけます。

範囲が広い場合には、わざと皮膚をかぶれさせて免疫の関心をそらす局所免疫療法が選ばれることもあります。外部から別の刺激を与えることで、攻撃の手を緩めさせる手法です。

その過程を通じて、過敏になっている免疫系をいかになだめるかが重要になります。治療によって炎症が沈静化すれば、毛根は再び活動を開始し、新しい芽を出し始めます。

重症化している場合は、内服薬や点滴が必要になることもありますが、副作用とのバランスを見ながら慎重に進められます。医師との緊密な連携が成功のポイントです。

代表的な治療法の目的別分類

治療対象主な治療手段期待される作用
円形脱毛症ステロイド・免疫療法自己免疫攻撃の停止
AGA5αリダクターゼ阻害薬DHTの生成抑制
補助的ケアミノキシジル外用毛母細胞の活性化

ホルモン活性を抑えるAGA治療

AGAの場合、元凶であるDHTの生成を抑えることが治療の柱です。内服薬を用いることで、体内のホルモン変換を阻害し、髪の成長を妨げる信号を根本から断ち切ります。

これに加え、血行を促進して毛母細胞を活性化させる外用薬を併用することが一般的です。今の髪を守りつつ、将来の髪を育てるという、二段構えのアプローチが求められます。

免疫系に働きかけるのではなく、内分泌系と細胞の活性に直接訴えかけるのが、この治療の理屈です。体のシステムを正常な発毛モードに切り替えるイメージで治療を進めます。

効果が出るまでには時間がかかりますが、継続することで多くの人が改善を実感しています。焦らずじっくりと腰を据えて、ホルモンとの長い付き合いをコントロールしましょう。

継続期間と期待できる効果

円形脱毛症は、治療によって炎症が治まれば、数ヶ月から半年程度で再び毛が生え揃うことが期待できます。炎症さえ消えれば、髪を作る力自体は残っていることが多いからです。

一方のAGA治療は、ホルモンバランスという体質に関わる部分を扱うため、長期的な継続が前提となります。薬を服用し始めてから変化を感じるまでには、通常一年程度の時間が必要です。

短期間での劇的な変化を求めるのではなく、根気強くケアを続ける姿勢が何より大切です。自分の髪のライフサイクルを尊重し、時間をかけて回復を見守ってあげてください。

途中で治療を止めてしまうと、再びホルモンの影響が強まり、元の状態に戻ってしまう恐れがあります。持続可能な方法で、日々の生活の一部として組み込んでいくことが理想です。

日常生活でのケアと再発防止の考え方

専門的な治療と並行して、日々の生活習慣を整えることは、髪の健康を維持するために極めて重要です。薬の効果を最大限に引き出すための土壌作りを怠らないようにしましょう。

円形脱毛症においては免疫バランスを整えること、AGAにおいては頭皮環境を良好に保つことが、それぞれの再発防止や進行抑制に直接的に繋がっていきます。

日々の何気ない選択が、数年後のあなたの髪型を決定づけると言っても過言ではありません。今日から始められる具体的なケアのポイントを、心に留めておいてください。

毛髪への栄養供給を支える食事

髪の毛の9割以上はケラチンというタンパク質でできています。これを生成するためには、良質なタンパク質に加え、亜鉛やビタミン類などの補助栄養素が欠かせません。

特に円形脱毛症を経験している人は、免疫バランスを整えるビタミンDや、抗酸化作用のあるビタミンEを積極的に摂取することが推奨されます。体の内側から守りを固めましょう。

また、AGAが気になる方は、大豆製品に含まれるイソフラボンを意識してください。これが男性ホルモンの働きを穏やかにサポートするという説もあり、食事のアクセントになります。

その結果として、多種多様な栄養素をバランスよく取り込むことが、毛包を内側から元気にします。偏った食事は髪の栄養不足を招くだけでなく、全身の老化をも早めてしまいます。

髪の健康をサポートする栄養成分

  • ケラチンの材料となる動物性・植物性タンパク質
  • 細胞分裂を促進し合成を助ける亜鉛
  • 血流を改善し抗酸化を担うビタミン類

適切なシャンプーと地肌管理

頭皮は髪を育む大切な畑です。過剰な皮脂や汚れは雑菌の繁殖を招き、炎症の原因となりますが、一方で洗いすぎも問題です。必要な油分まで奪うと、頭皮は砂漠化してしまいます。

アミノ酸系などの低刺激なシャンプーを選び、指の腹で優しく揉み込むように洗うのが理想です。爪を立ててガシガシ洗うのは、デリケートな毛包を傷つける原因になるので厳禁です。

洗髪後は、吸水性の良いタオルで水分を拭き取り、ドライヤーの温風で素早く乾かしましょう。湿ったまま放置すると細菌が繁殖しやすくなり、頭皮トラブルの火種となります。

清潔でありながら適度な潤いを保った頭皮環境こそが、スムーズな発毛を助ける最良の土台です。毎日のバスタイムを、単なる洗浄ではなく頭皮のケアタイムとして活用してください。

精神的な安寧を保つ環境作り

強い精神的負荷は自律神経を乱し、血管を収縮させて血流を悪化させます。円形脱毛症の場合、ストレスそのものが引き金や悪化因子になることは広く知られている事実です。

また、AGAにおいても、ストレスはホルモンバランスを乱す要因になります。心に余裕がない状態が続くと、髪への栄養供給が後回しにされ、薄毛の進行を早める恐れがあります。

趣味の時間を持つ、適度な運動をする、質の良い睡眠を確保するといった、当たり前のようで難しい心の休息を意識的に確保してください。心の健康が、髪の輝きを支えています。

夜更かしを避け、一定のリズムで生活を送るだけでも、自律神経は安定に向かいます。リラックスした状態で過ごす時間が長いほど、髪の再生能力は高まっていくものです。

Q&A

Q
円形脱毛症は放っておいても自然に治るものですか?
A

軽度の単発型であれば、特に何もしなくても数ヶ月以内に自然に治癒することがあります。しかし、範囲が広がっている場合や何度も繰り返している場合は、免疫の異常が根深い可能性があるため、早期に専門医の診察を受けることが推奨されます。

放置することで多発型や全頭型へ進行するリスクもあるため、早めの対処が大切です。髪が抜けるという現象は、体が発している何らかのシグナルであることが多いため、軽視せずに原因を探ることが将来の安心に繋がります。

Q
AGAと円形脱毛症を同時に発症することはあるのでしょうか?
A

はい、併発する可能性は十分にあります。元々AGAによって全体的に髪が薄くなっていた方が、ストレスや体調不良をきっかけに円形脱毛症を併発するケースは珍しくありません。この場合、両方の原因に対するアプローチが必要になります。

それぞれの治療法は異なるため、どちらか一方だけの対策では不十分な結果になることがあります。急に特定の場所が抜け始めたと感じたら、既存のAGA対策だけでなく、円形脱毛症としての診断も仰ぐようにしてください。

Q
円形脱毛症が治った後に生えてきた毛が白いのはなぜですか?
A

円形脱毛症の回復期には、最初に白髪のような色のない毛が生えてくることがよくあります。これは、免疫攻撃によって髪の色を作る細胞(メラノサイト)の働きが一時的に低下しているためです。機能が完全に回復していない段階での発毛と言えます。

治療が進み、毛包の健康状態が完全に戻れば、徐々に本来の髪の色に戻っていくことが多いため、過度に心配する必要はありません。黒い毛に戻るまでは時間がかかることもありますが、発毛していること自体を前向きに捉えて良いサインです。

Q
AGAの治療薬は円形脱毛症の治療にも効果がありますか?
A

基本的に、AGAの治療薬が円形脱毛症に直接的な効果を及ぼすことはありません。AGAの薬は男性ホルモンの影響を抑えるものであり、円形脱毛症の根本原因である自己免疫の異常を正すものではないからです。作用する場所が全く異なります。

ただし、円形脱毛症が完治した後の育毛補助として、血流を促進する目的で使用されることはあります。しかし、発症初期の激しい炎症を抑えるためには、ステロイドなどの別の薬が必要になりますので、必ず医師の処方に従ってください。

Q
筋トレをすると男性ホルモンが増えてAGAが悪化すると聞きましたが本当ですか?
A

筋トレによって一時的にテストステロン値は上昇しますが、それが直接的にAGAを激的に悪化させるという明確な証拠はありません。むしろ、適度な運動による血流改善やストレス解消といったメリットの方が、髪の健康にとっては大きいと考えられます。

極端なドーピングなどを行わない限り、健康管理としての筋トレを控える必要はないと言えます。全身の代謝を上げ、血の巡りを良くすることは、頭皮に栄養を届ける上でもプラスに働きます。バランスの取れた運動習慣を継続しましょう。

参考にした論文