薄毛やAGA(男性型脱毛症)の悩みを解消しようと情報を探していると必ず目にするのが「5αリダクターゼ」という言葉です。

しかし、この酵素に「1型」と「2型」の2種類が存在し、それぞれ性質や対策が異なる事実は意外と知られていません。

自分の薄毛の原因がどちらの型に強く影響を受けているかを知らずに対策を行っても、期待する効果を得ることは難しくなります。

本記事では、1型と2型の決定的な違いから、それぞれの特徴、そして自分に適した具体的な対策方法までを網羅的に解説します。

正しい知識を身につけ、無駄のない効果的なアプローチで自信を取り戻しましょう。

5αリダクターゼとは何か?薄毛との関係性

AGA(男性型脱毛症)の根本的な原因を理解するには、まず5αリダクターゼという還元酵素の働きを正しく把握することが重要です。

この酵素自体は人体にとって悪者ではなく、本来は身体機能の維持に関わる重要な役割を担っています。しかし、頭皮環境や遺伝的な要因が重なることで、ヘアサイクルを乱す最大の要因へと変貌します。

5αリダクターゼがどのようにして薄毛を引き起こすのか、その基本的な構造と影響について解説します。

酵素としての本来の役割と働き

5αリダクターゼは、ステロイドホルモンの代謝に関与する酵素の一種であり、主に男性ホルモンの変換を助ける働きを持っています。

人体においては、精巣や前立腺、皮膚組織などに広く存在し、男性らしい体つきの形成や生殖機能の維持に貢献しています。

この酵素がなければ、男性器の正常な発達や体毛の成長といった男性特有の身体的特徴が現れにくくなるほど、生物学的には重要な存在です。

しかし、この酵素は加齢とともにその役割や影響力が変化します。思春期以降においては、必ずしも身体の成長にプラスの作用ばかりをもたらすわけではありません。

特に頭皮においては、男性ホルモンの性質を変えてしまう触媒として機能します。本来は身体を守り成長させるための酵素が、特定の条件下では組織に対してマイナスの影響を与える要因となり得るのです。

この二面性を理解することが、AGA対策の第一歩となります。

テストステロンと結合するリスク

薄毛が進行する直接的なきっかけは、男性ホルモンの一種である「テストステロン」と5αリダクターゼが結びつく化学反応にあります。

テストステロン自体は、筋肉や骨格を作ったり、やる気や活力を生み出したりする「良い男性ホルモン」としての側面が強い物質です。

しかし、頭皮の毛乳頭細胞付近に存在する5αリダクターゼと出会うことで、テストステロンはその姿を変えます。

この結合によって生まれるのが、「ジヒドロテストステロン(DHT)」と呼ばれる強力な男性ホルモンです。

DHTは別名「脱毛ホルモン」とも呼ばれ、テストステロンの数倍から数十倍の強力な結合力を持っています。

テストステロンが単体で存在している間は髪への悪影響はほとんどありませんが、5αリダクターゼという触媒を介してDHTへと変換された瞬間、髪の成長を阻害するスイッチが入ってしまうのです。

つまり、テストステロンの量が多いこと自体が問題なのではなく、それをDHTへ変換する酵素の働きが活発かどうかが鍵を握ります。

AGA発症の根本原因とヘアサイクルの乱れ

生成されたDHTは、毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)と結合します。

この結合が起こると、毛乳頭細胞は「髪の成長を止めろ」「早く抜け落ちろ」という誤ったシグナルを出すようになります。

これがAGAの発症メカニズムであり、通常のヘアサイクルを劇的に短縮させてしまう原因です。

通常、髪の毛は2年から6年かけて太く長く成長する「成長期」を持っています。しかし、DHTの影響を受けた毛根では、この成長期が数ヶ月から1年程度にまで極端に短くなってしまいます。

その結果、髪が太く育つ前に抜け落ちてしまい、細くて短い産毛のような髪ばかりが目立つようになります。これが薄毛や抜け毛の正体です。

5αリダクターゼの働きを抑制し、DHTの生成を食い止めない限り、このヘアサイクルの乱れは進行し続けます。自然治癒することは極めて稀であるため、早期に医学的な介入や適切なケアを行うことが大切です。

1型と2型の主な違いと特徴の比較

5αリダクターゼには、性質や分布場所が異なる「1型」と「2型」が存在します。どちらもテストステロンをDHTに変換するという点では同じですが、その影響範囲や強さには明確な違いがあります。

自分の薄毛がどちらのタイプの影響を強く受けているかを知ることは、治療薬の選択や対策の優先順位を決める上で非常に重要です。両者の違いを明確に区別し、それぞれの特性を理解しましょう。

分布する部位と影響範囲の違い

1型と2型の最も大きな違いの一つは、体内のどこに多く存在しているかという「分布エリア」です。1型5αリダクターゼは、全身の皮脂腺に広く分布しています。

頭皮だけでなく、顔や背中など皮脂分泌が盛んな場所のほとんどに存在し、側頭部や後頭部を含めた頭皮全体に影響を及ぼします。

そのため、1型が優位な場合は、特定の部位だけでなく全体的な髪のボリュームダウンを感じることがあります。

対照的に、2型5αリダクターゼは分布エリアが限定的です。主に前頭部(生え際)から頭頂部(つむじ周辺)の毛乳頭細胞に集中して存在しています。また、髭や脇毛などの体毛の毛乳頭にも多く見られます。

AGAの特徴的な進行パターンである「M字ハゲ」や「O字ハゲ」は、この2型が特定の部位に集中していることと深く関係しています。

側頭部や後頭部の髪が残りやすいのは、この部位には2型がほとんど存在しないためです。

1型と2型の基本的な特徴比較

以下に、1型と2型の主な違いを整理しました。自分の症状がどちらに当てはまるか確認してみましょう。

比較項目1型5αリダクターゼ2型5αリダクターゼ
主な存在場所全身の皮脂腺(側頭部・後頭部含む)前頭部・頭頂部の毛乳頭
酵素の働き皮脂分泌の促進に関与体毛増加や脱毛作用が強力
薄毛の特徴全体的に髪が細くなる、脂っぽい生え際の後退、頭頂部の薄毛

この表からも分かるように、2型は局所的な薄毛に、1型は全体的な髪質の変化や頭皮環境に影響を与えやすい傾向があります。

生成されるDHTの量と活性度の違い

テストステロンをDHTに変換する能力、つまり酵素としての「パワー」にも違いがあります。一般的に、2型5αリダクターゼの方が1型よりもDHTを生成する力が強いと考えられています。

また、2型によって生成されたDHTは、毛乳頭細胞の受容体に対する影響力がより深刻で、脱毛指令を強力に出す傾向があります。これが、AGA治療において2型の抑制が最優先とされる理由です。

しかし、1型を軽視してよいわけではありません。1型は全身に広く存在するため、総量としての影響は無視できません。また、1型によって生成されたDHTも確実に毛根へダメージを与えます。

特に、2型への対策を行っても効果が不十分な場合、この1型の影響が残っている可能性が高いと考えられます。両方の型が活発に働いているケースもあり、その場合はより包括的な対策が必要です。

側頭部や後頭部の薄毛への影響

AGAの特徴として「側頭部や後頭部の髪は残る」という定説がありますが、これは主に2型の分布に関連した話です。2型は前頭部と頭頂部に集中しているため、そのエリアの髪が集中的に攻撃を受けます。

一方で、1型は側頭部や後頭部の皮脂腺にも存在しています。

そのため、1型の活動が非常に強い人の場合、AGAの定説に反して側頭部や後頭部の髪も細くなったり、全体的にボリュームが落ちたりする現象が見られます。

もしあなたの薄毛が、生え際や頭頂部だけでなく、耳周りや襟足近くまで全体的にスカスカになっているようであれば、1型5αリダクターゼの影響を疑う必要があります。

2型対策の薬を飲んでいるのに抜け毛が止まらない場合、この側頭部や後頭部に潜む1型がDHTを作り続けている可能性があります。

部位による症状の違いを観察することで、どちらの型が優勢かをある程度推測することができます。

1型5αリダクターゼが引き起こす特有の症状

1型5αリダクターゼは、単に髪を薄くするだけでなく、頭皮環境全体に特有の変化をもたらします。皮脂腺に多く存在するという特性上、脂性肌や皮膚トラブルとセットで語られることが多いのが1型の特徴です。

1型が引き起こす具体的な症状や、薄毛以外のサインについて詳しく見ていきます。これらの兆候を見逃さないことが、早期発見につながります。

1型特有の頭皮トラブルと身体的特徴

1型の働きが活発な場合、髪の毛以外にも以下のようなサインが身体に現れることがあります。

  • 頭皮の皮脂分泌が過剰で、洗髪後もすぐに脂っぽさを感じる
  • 顔のTゾーンや背中などにニキビができやすく、肌トラブルが多い
  • フケがパラパラと乾燥しておらず、湿り気を帯びて塊になりやすい

こうした身体的特徴は、単なる体質ではなく酵素の影響を受けている可能性があります。

皮脂分泌との深い関わり

1型5αリダクターゼの最大の特徴は、皮脂腺の機能を活発化させる点にあります。この酵素が過剰に働くと、必要以上の皮脂が分泌され、頭皮環境が悪化しやすくなります。

皮脂は本来、頭皮を乾燥から守るバリアの役割を果たしますが、過剰になると毛穴を塞ぎ、酸化して過酸化脂質へと変化します。これが毛根に炎症を引き起こし、髪の成長を妨げる土壌を作ってしまいます。

夕方になるとおでこや頭皮が油でテカテカになる人や、枕カバーがすぐに汚れてしまう人は、1型5αリダクターゼの活性が高い可能性があります。

過剰な皮脂は、単なる体質ではなく、酵素の働きによるホルモンバランスの結果である場合が多いのです。

この場合、単に洗浄力の強いシャンプーを使うだけでは根本解決にならず、体内からの酵素対策が必要になります。

脂漏性脱毛症との併発リスク

1型による過剰な皮脂分泌は、AGAだけでなく「脂漏性脱毛症」という別の脱毛症を併発させるリスクを高めます。

脂漏性脱毛症は、過剰な皮脂を餌にするマラセチア菌という常在菌が異常繁殖し、頭皮に強い炎症を起こすことで髪が抜ける病気です。

AGAの進行に加え、この炎症による抜け毛が重なると、薄毛の進行スピードは加速します。

頭皮が赤く炎症を起こしていたり、痒みを伴う抜け毛が多かったりする場合は注意が必要です。

1型5αリダクターゼを抑制することは、DHTの生成を抑えるだけでなく、この過剰な皮脂分泌をコントロールし、脂漏性脱毛症のリスクを下げることにもつながります。

頭皮のベタつきと薄毛がセットで進行している場合、1型へのアプローチが極めて重要です。

全身の毛への影響

1型5αリダクターゼは全身の皮脂腺に存在するため、その影響は頭髪以外にも現れることがあります。

体毛の濃さと薄毛の関係はよく議論されますが、1型の働きが強い人は、体全体の皮脂分泌が多く、体毛も濃くなりやすい傾向があると一部で指摘されています。

ただし、体毛の成長には別のホルモンバランスも複雑に関与するため、一概には言えません。

重要なのは、1型の酵素活性が高い場合、頭皮全体の環境が悪化しやすいという点です。

部分的な薄毛治療薬を塗布しても、頭皮全体が脂っぽく炎症を起こしやすい状態では、薬の成分が浸透しにくかったり、効果が半減したりします。

全身的な傾向として「脂性」であるという自覚があるならば、1型をターゲットにした内服薬や、皮脂コントロールを含めた総合的なケアを検討する価値があります。

2型5αリダクターゼがAGAの主犯とされる理由

多くのAGAクリニックや医療機関が、まず「2型」の抑制に力を入れるのには明確な理由があります。AGAの典型的な進行パターンの背後には、常にこの2型5αリダクターゼの強力な作用が存在するからです。

なぜ2型がAGAの主犯格として扱われるのか、その強力なメカニズムと遺伝的な背景について深く掘り下げて解説します。

前頭部と頭頂部への集中攻撃

AGA患者の多くが悩む「M字ハゲ(生え際の後退)」や「O字ハゲ(つむじ周辺の薄毛)」は、2型5αリダクターゼの分布エリアと完全に一致します。

2型は前頭部と頭頂部の毛乳頭に高濃度で存在し、そこで集中的にDHTを生成します。この局地的な集中攻撃こそが、AGA特有の脱毛パターンを作り出しています。

側頭部の髪はフサフサなのに、頭頂部だけが薄くなるのは、まさに2型の仕業です。

この部位特異性は、治療の効果測定においても重要です。生え際や頭頂部の改善が見られた場合、それは2型に対する対策が功を奏している証拠と言えます。

逆に言えば、この部位の薄毛が進行している場合、何よりも優先して2型を抑制しなければ、どれだけ髪に良い栄養を摂っても、抜け毛のスイッチが入ったままの状態が続くことになります。

2型の特徴的な脱毛パターン

2型が影響する場合、以下のように進行パターンが顕著に現れるのが特徴です。

進行パターン症状の詳細2型の関与度
M字型(生え際)剃り込みが入るように両サイドが後退する極めて高い
O字型(頭頂部)つむじを中心に円形に地肌が透ける極めて高い
U字型(複合)前頭部と頭頂部が繋がり広範囲に及ぶ非常に深刻

もし鏡を見てこれらのパターンに当てはまるなら、2型への対策が急務であると言えます。

毛乳頭細胞での強力な作用

2型5αリダクターゼが厄介なのは、その存在場所が「毛乳頭細胞の中」であるという点です。毛乳頭細胞は髪の毛の製造工場における司令塔であり、髪の成長に関するあらゆる指示を出しています。

この司令塔の内部で直接DHTが生成されるため、脱毛指令がダイレクトに伝わりやすく、影響が甚大になります。外部からの影響ではなく、内部からの破壊工作が行われているような状態です。

また、2型は低濃度のテストステロンでも反応してDHTを作り出す能力が高いと言われています。

つまり、血中の男性ホルモン濃度がそれほど高くなくても、毛乳頭内にある2型酵素が存在する限り、効率よくDHTが生産され続けてしまうのです。

この効率の良さが、AGAの進行を止めにくい要因の一つとなっており、強力な医薬品によるブロックが必要とされる理由でもあります。

遺伝的要素との関連性

「薄毛は遺伝する」とよく言われますが、この遺伝の正体の一つが、2型5αリダクターゼの活性度や、アンドロゲンレセプターの感受性です。

特に母方の祖父が薄毛である場合、その遺伝的形質を受け継ぐ確率が高いことが分かっています。2型5αリダクターゼの活性が高い遺伝子を持っている場合、早い段階からAGAを発症するリスクが高まります。

遺伝的要因が強い場合、生活習慣の改善だけでは進行を食い止めることが困難です。

遺伝子レベルで「2型が活発に働く」ようにプログラムされているため、そのスイッチを医学的にオフにするアプローチが必要です。

親族に薄毛の人が多い場合は、2型の影響を強く受けている可能性が高いと判断し、早期に専門的な治療を開始することが、将来の髪を守るための賢明な判断となります。

自分はどっち?タイプを見極める方法

効果的な対策を打つためには、自分が「1型優位」なのか「2型優位」なのか、あるいは「両方」なのかを知る必要があります。

完全に断定するには医療機関での検査が必要ですが、薄毛の進行パターンや体質からある程度の傾向を予測することは可能です。

セルフチェックのポイントと、より確実に知るための科学的な手法を紹介します。

セルフチェックと医療検査の比較

自分のタイプを知る方法は大きく分けて以下の3つがあります。それぞれの特徴を理解して選択してください。

判定方法手軽さ精度の高さ
進行パターン観察すぐに確認可能目安程度(混合型も多いため)
肌質・体質チェック主観で判断可能あくまで傾向を知るレベル
AGA遺伝子検査キット購入や通院が必要客観的なデータが得られる

手軽なセルフチェックから始め、確信が持てない場合や治療効果が出ない場合に検査を検討するのがスムーズです。

薄毛の進行パターンから予測する

鏡を見て、薄毛がどのように進行しているかを確認してください。前述の通り、生え際(M字)や頭頂部(O字)が明確に薄くなっている場合、2型5αリダクターゼの影響を強く受けている可能性が高いです。

これはAGA患者の大多数に当てはまるパターンであり、まずは2型対策を行うのが定石です。

一方で、特定の部位だけでなく、全体的に髪の密度が減っている、側頭部の髪も細くなっている、という場合は1型の関与を疑います。

また、M字とO字の進行が急激で、頭皮全体の勢いがない場合は、1型と2型の両方が強く作用している混合タイプの可能性があります。

進行パターンは過去数年間の変化を思い出しながら冷静に分析することが大切です。

肌質や体質の傾向を確認する

頭皮や顔の肌質も重要なヒントになります。1型は皮脂腺に多いため、オイリー肌の人は1型の活性が高い傾向にあります。

洗顔してもすぐに顔がテカる、頭皮が常に湿っている、思春期の頃からニキビに悩まされていた、といった特徴がある場合は、1型の働きを無視できません。

逆に、乾燥肌で皮脂は少ないのに薄毛が進行している場合は、2型の局所的な作用が原因である可能性が高まります。

皮脂の量と薄毛の進行度が比例しているように感じるなら、1型対策を含めたアプローチが必要です。自分の肌質を客観的に見直すことで、見えない酵素の働きを推測する材料にしてください。

遺伝子検査キットの活用

推測ではなく確実なデータが欲しい場合は、AGA専門クリニックや市販の「AGA遺伝子検査キット」を利用することを推奨します。

これらの検査では、アンドロゲンレセプターの感受性(DHTの影響を受けやすい体質かどうか)や、特定のリスク遺伝子を調べることができます。

検査結果によって、フィナステリド(2型阻害)が効きやすい体質か、デュタステリド(1型・2型阻害)が必要な体質かという指標が示されることもあります。

自分に合った薬を選ぶための投資として、検査を受けることは非常に有益です。無駄な治療を長く続けるリスクを回避し、最短ルートで改善を目指すための羅針盤となります。

タイプ別に見る有効な対策と治療薬の選び方

自分のタイプがある程度予測できたら、次はそのタイプに適した具体的な対策を実行します。現在、AGA治療薬として認可されている成分には明確な役割分担があり、ターゲットとする酵素の型が異なります。

代表的な治療薬である「フィナステリド」と「デュタステリド」の使い分けを中心に、効果的な対策法を解説します。

主な治療薬のターゲット比較

治療薬にはそれぞれ得意な守備範囲があります。自分のタイプに合わせて最適な武器を選びましょう。

成分名(製品名例)阻害対象特徴
フィナステリド
(プロペシア等)
主に2型世界中で実績がある標準治療薬
デュタステリド
(ザガーロ等)
1型と2型の両方広範囲をカバーし抑制力が強い
外用ミノキシジル発毛促進(酵素阻害なし)守りの薬と併用して攻める役割

多くのクリニックでは、まず副作用のバランスが良いフィナステリドから提案されることが一般的です。

フィナステリドが効くタイプ

典型的なAGAの症状、つまり生え際や頭頂部の薄毛が気になり始めた段階の人には、まずは「フィナステリド」が推奨されます。

フィナステリドは2型5αリダクターゼを選択的に阻害する働きがあり、AGAの主犯格をピンポイントで抑え込みます。

多くの臨床試験で抜け毛の減少や現状維持の効果が確認されており、副作用のリスクも比較的低いとされています。

初めてAGA治療を行う場合や、まだ薄毛が初期段階である場合は、フィナステリドから開始するのが一般的です。2型を抑えるだけでもDHTの総量は大幅に減少するため、多くの人で十分な改善が見込めます。

まずはこの薬で半年から1年程度様子を見て、効果を判定するのが堅実な戦略です。

デュタステリドを選ぶべきケース

フィナステリドで効果が不十分だった場合や、最初から薄毛がかなり進行している場合、あるいは皮脂が多く1型の関与が強く疑われる場合は、「デュタステリド」が選択肢に入ります。

デュタステリドは1型と2型の両方の5αリダクターゼを阻害する作用を持ち、DHTの生成をより強力にシャットアウトします。

研究データでは、フィナステリドよりも増毛効果が高いという報告も多く、特に生え際の改善や太い髪の増加において優位性が示されています。

ただし、作用が強力なぶん、副作用の発現率もわずかに高くなる傾向があります。医師と相談の上、より確実な効果を求める場合や、フィナステリドからの切り替えとして使用することが多い薬です。

1型への対策も兼ねたいなら、デュタステリドが有力な候補となります。

育毛剤や生活習慣でのサポート

内服薬が治療の柱ですが、外側からのケアも重要です。育毛剤を選ぶ際は、有効成分に注目してください。

例えば、「ノコギリヤシ」や「亜鉛」などは5αリダクターゼの働きを抑制するサポート効果があると言われています。

医薬品ほどの強力な効果はありませんが、頭皮環境を整え、薬の効果を底上げする補助的な役割を果たします。

また、生活習慣において脂質の多い食事を控えることは、1型対策として有効です。

皮脂の過剰分泌は食事内容に大きく影響されるため、バランスの取れた食事を心がけることで、頭皮のベタつきを内側からコントロールすることができます。

治療薬で守りを固めつつ、育毛剤と生活習慣で攻めの土台を作る、この総力戦がAGA克服への近道です。

治療薬の副作用リスクと安全な服用方法

5αリダクターゼを阻害する薬は高い効果を持ちますが、ホルモンバランスに介入する以上、副作用のリスクはゼロではありません。

これから対策を始める人が不安に感じるポイントを整理し、安全に治療を継続するための心構えを解説します。リスクを正しく恐れ、適切な管理下で使用することが大切です。

知っておくべき主な副作用と注意点

服用前に必ず理解しておくべきリスクとして、主に以下の3点が挙げられます。

  • 性欲の低下や機能不全など、男性機能に関わる一時的な変化
  • 治療初期に古い髪が抜け落ちる「初期脱毛」と呼ばれる現象
  • 薬の代謝に伴う肝機能への負担(定期検査が推奨されます)

これらの副作用は全員に出るわけではありませんが、予備知識として持っておくことで冷静に対処できます。

性機能への影響について

最も懸念される副作用の一つが、性欲減退や勃起不全です。男性ホルモンの代謝に関わる酵素を阻害するため、一部の人にこのような症状が現れることがあります。

臨床試験のデータでは数パーセント程度の発現率ですが、心理的な要因(プラシーボ効果)で症状を感じるケースも少なくありません。

もし症状が現れた場合は、医師に相談して減薬したり、薬の種類を変えたりすることで改善することがあります。

また、ED治療薬との併用も医学的に問題ないケースが多いため、過度に心配しすぎて治療を諦める前に、専門医のアドバイスを求めることが重要です。

妊活中の方などは、服用を一時中断する必要があるため、ライフプランに合わせた服用計画を立ててください。

初期脱毛という通過儀礼

治療を開始して1ヶ月〜2ヶ月頃に、一時的に抜け毛が増える現象が起こることがあります。これを「初期脱毛」と呼びます。これは薬が効いていないのではなく、むしろ効き始めている証拠です。

乱れていたヘアサイクルが正常化し、新しい髪が古い髪を押し出して生えてくる過程で起こるポジティブな反応です。

多くの人がここで驚いて薬をやめてしまいますが、それは非常にもったいないことです。初期脱毛はあくまで一時的なものであり、その後には太く強い髪が生えてきます。

このメカニズムを事前に理解し、「今は生え変わり時期だ」とどっしり構えて継続することが、成功への大きな鍵となります。

肝機能への負担と定期検査

薬は肝臓で代謝されるため、体質によっては肝機能に負担がかかることがあります。自覚症状が出にくいため、定期的な血液検査で数値をチェックすることが大切です。

個人輸入などで安易に薬を入手して服用するリスクはここにあります。医師の管理下であれば、万が一数値に異常が出てもすぐに対応できます。

安全に治療を長く続けるためにも、自己判断での服用は避け、半年に一度程度は血液検査を行いましょう。自分の体を守りながら髪を取り戻すことが、真のAGA治療です。

Q&A

Q
1型と2型は同時に検査できますか?
A

医療機関で行うAGA遺伝子検査では、基本的にリスクの判定を行いますが、厳密に「今の瞬間にどちらの酵素がどれだけ出ているか」を数値化して測る検査は一般的ではありません。

しかし、遺伝子検査によって、フィナステリド(2型阻害)の効果が出やすい体質かどうかを調べることは可能です。

この結果から間接的に自分のタイプを判断し、治療方針を決めることができます。

Q
薬を飲み始めたら一生飲み続ける必要がありますか?
A

AGAは進行性の症状であるため、服用を完全に中止すると、再び5αリダクターゼの働きが活発になり、薄毛が進行する可能性が高いです。

ただし、ある程度髪が生え揃って満足できる状態になったら、医師と相談の上で薬の量を減らしたり、現状維持を目的とした軽い薬に切り替えたりすることは可能です。

完全にやめるのではなく、コントロールしながら付き合っていくという認識が大切です。

Q
市販の育毛剤で5αリダクターゼは抑制できますか?
A

市販の育毛剤の中には、5αリダクターゼの働きを阻害するとされる成分が含まれているものもありますが、その効果は医薬品に比べると限定的です。

あくまで頭皮環境を整える、あるいは医薬品のサポート役としての位置づけで考えるのが妥当です。

本格的なAGAの進行を食い止めたいのであれば、まずは医薬品による内側からのブロックを優先し、育毛剤は補助として併用することをお勧めします。

Q
女性でも5αリダクターゼの影響を受けますか?
A

女性にも男性ホルモンは微量ながら存在しており、5αリダクターゼの影響を受けてFAGA(女性男性型脱毛症)を発症することがあります。

ただし、女性の場合はホルモンバランスが複雑であり、男性用の治療薬(特にフィナステリドやデュタステリド)は男子胎児への影響があるため、服用は厳禁とされています。

女性には女性専用の治療法や対策が必要となるため、必ず女性の薄毛に対応したクリニックを受診してください。

参考にした論文