「最近、髪のハリやコシがなくなってきた」「分け目が目立つようになった」――そんなお悩みを抱える女性は少なくありません。髪の変化にはさまざまな原因がありますが、見落とされがちなのが体内のタンパク質、とりわけコラーゲンの減少です。

コラーゲンは肌だけでなく、頭皮や毛包(もうほう)の環境を整えるうえでも大切なタンパク質として知られています。加齢やストレス、食事の偏りによってコラーゲンが不足すると、頭皮の弾力が失われ、髪の成長にも影響が出る場合があります。

この記事では、コラーゲンと髪の健康との関係を医学的な知見をもとにわかりやすく解説し、日常生活でできるケアや食事の工夫についてお伝えします。

目次

コラーゲンとは何か?髪と頭皮を支えるタンパク質の基礎知識

コラーゲンは人体で最も多いタンパク質であり、皮膚・骨・腱・血管など全身に広く存在しています。体内のタンパク質全体の約30%を占めるといわれ、細胞同士をつなぐ「接着剤」のようなはたらきを担っています。

コラーゲンが体の中で果たしている仕事

コラーゲンは3本のアミノ酸の鎖がらせん状にねじれ合った独特の構造をしています。グリシン・プロリン・ヒドロキシプロリンといったアミノ酸が豊富に含まれており、この組成は他のタンパク質にはほとんど見られません。

皮膚の真皮層ではI型コラーゲンが網目のように張り巡らされ、肌の弾力やハリを保っています。頭皮もまた皮膚の一部ですから、コラーゲンの量や質は頭皮環境に直接影響を及ぼすといえるでしょう。

体内にはどんな種類のコラーゲンがあるのか

現在、ヒトの体内では29種類以上のコラーゲンが確認されています。髪や頭皮に関連が深いのはI型・III型・XVII型の3つです。I型は真皮の構造を支え、III型は弾力性に関わっています。

XVII型コラーゲン(COL17A1)は毛包の幹細胞(もうほうのかんさいぼう)を維持するうえで特に注目されています。東京医科歯科大学の研究チームは、XVII型コラーゲンが減少すると毛包幹細胞が老化し、毛包の縮小や脱毛につながることを報告しました。

髪と頭皮に関連する主なコラーゲンの種類

種類存在する場所髪への関わり
I型真皮・骨・腱頭皮の構造維持
III型真皮・血管壁頭皮の柔軟性
XVII型毛包の基底膜毛包幹細胞の維持

髪の毛そのものとコラーゲンの接点

髪の毛の主成分はケラチンというタンパク質ですが、毛包の周囲を取り囲む組織にはコラーゲンが豊富に含まれています。毛母細胞(もうぼさいぼう)が活発に分裂して髪を成長させるには、栄養や酸素を届ける頭皮の土台が健全でなくてはなりません。コラーゲンは、その土台を形づくる「縁の下の力持ち」といえます。

コラーゲン不足で髪が細くなる?女性の薄毛と頭皮コラーゲンの深い結びつき

コラーゲンが減少すると頭皮の真皮が薄くなり、毛包を支える力が弱まるため、髪が細くなったり抜けやすくなったりする場合があります。年齢を重ねるごとにコラーゲン産生量は減っていきますが、女性ホルモンの変動もこの減少を加速させます。

加齢によるコラーゲン減少が毛包に与えるダメージ

人の体では20代をピークにコラーゲンの合成量が徐々に低下し、40代以降はその減少スピードが一段と速まるといわれています。真皮のコラーゲン量が減ると、頭皮が硬くなり血行も滞りがちになるでしょう。

2016年にScienceに掲載された研究では、毛包幹細胞のDNA損傷がXVII型コラーゲンの分解を引き起こし、幹細胞が表皮へと押し出されて脱落してしまうことが明らかになりました。つまり、コラーゲンの分解が加齢による薄毛を直接的に駆動している可能性があるのです。

女性ホルモンの変化とコラーゲン産生量のゆらぎ

エストロゲンにはコラーゲンの合成を促す作用があるため、更年期に入りエストロゲンが急減すると、肌だけでなく頭皮のコラーゲンも大きく減少します。閉経後5年間で皮膚のコラーゲンが最大30%減少するというデータもあり、髪のボリュームダウンと時期が重なるのは偶然ではありません。

ストレスや栄養不足がコラーゲンの質を落とす

慢性的なストレスは体内で活性酸素を増やし、コラーゲン線維の架橋(かきょう=繊維同士のつながり)を変性させます。紫外線による光老化もコラーゲンを傷つける大きな要因です。さらに、ビタミンCや鉄分が不足するとコラーゲンの合成そのものが滞ります。

栄養バランスが偏った食事を続けている方や、過度なダイエットを行っている方は特に注意が必要です。タンパク質の摂取量が足りなければ、体はコラーゲンを十分につくることができません。

コラーゲン不足を招きやすい生活習慣

要因コラーゲンへの影響対策の方向性
加齢合成量が減少食事や補助食品での補給
紫外線分解酵素が活性化帽子や日傘の使用
栄養不足合成原料が不足バランスのよい食事
ストレス活性酸素が増加休養・運動習慣
喫煙血流悪化・合成阻害禁煙

コラーゲンペプチドの経口摂取は髪を育てる力になるのか

コラーゲンペプチドを口から摂取することで、髪の成長が促される可能性があるとする研究が近年増えています。ただし、効果の程度には個人差があり、あくまで補助的な手段として位置づけることが大切です。

動物実験や細胞実験で確認された髪への好影響

魚由来のコラーゲンペプチドをマウスに経口投与した研究では、休止期から成長期への移行が促進され、毛の密度が増加したことが報告されています。ヒト毛乳頭細胞(毛包の根元にある細胞)を用いた実験でも、コラーゲンペプチドが細胞の増殖や血管内皮増殖因子(VEGF)の分泌を高めることが確認されました。

2024年に発表された研究では、低分子コラーゲンペプチド(LMWCP)がWnt/β-カテニン経路と呼ばれるシグナル伝達を活性化し、毛包の新生を促したと報告されています。この経路は毛包の発生や再生に深く関わっているため、コラーゲンペプチドが髪の成長をサポートする仕組みのひとつと考えられます。

ヒトを対象とした臨床試験の結果

2023年に公表された前向き臨床試験では、海洋由来の加水分解コラーゲンやアミノ酸を含むサプリメントを12週間摂取した被験者群で、薄毛の改善度合いが対照群より高かったという結果が出ています。

コラーゲン経口摂取に関する主な研究結果

研究対象摂取期間主な結果
C57BL/6マウス6週間毛の再生スコアが向上
ヒト(83名)12週間脱毛改善スコアが有意に上昇
ヒト(140名)12週間頭皮の状態と髪の外観が改善

期待しすぎは禁物――現時点でのエビデンスの限界

研究の多くはまだサンプル数が限られており、用量や摂取期間も統一されていません。2022年に発表されたレビュー論文では、コラーゲンサプリメントの髪への効果についてメディアの主張が科学的根拠を上回っている点が指摘されました。

コラーゲンペプチドはあくまで食品であり、医薬品のような治療効果を保証するものではありません。髪の悩みが深刻な場合は、まず医療機関で原因を特定し、そのうえで補助的にコラーゲンの摂取を検討するのが望ましいでしょう。

コラーゲンを増やす食事とは?髪のために摂りたい栄養素と食材

コラーゲンの合成を促すには、コラーゲンそのものだけでなく、その合成に必要なビタミンやミネラルをバランスよく摂ることが重要です。毎日の食事の工夫が、頭皮と髪の健康を支える土台になります。

コラーゲンの材料になるアミノ酸を含む食品

コラーゲンの構成アミノ酸であるグリシン・プロリン・ヒドロキシプロリンは、鶏の手羽先や軟骨、魚の皮、豚足などに多く含まれています。骨付きの煮込み料理やスープストックは手軽にコラーゲンを摂取できる方法のひとつです。

ただし、食品から摂ったコラーゲンはそのまま体内のコラーゲンになるわけではありません。消化・吸収の過程でアミノ酸やペプチドに分解され、体内で再合成されます。そのため、アミノ酸のバランスを意識した食事全体の質がものをいいます。

ビタミンCと鉄は「コラーゲン合成の両輪」

コラーゲンの合成にはビタミンCが欠かせません。ビタミンCはプロリンやリジンの水酸化反応に関わる酵素の補因子として機能し、ビタミンCが不足するとコラーゲンの三重らせん構造が正常に形成されなくなります。柑橘類・キウイ・パプリカ・ブロッコリーなどを毎日の食事に取り入れてください。

鉄もまた酵素の補因子として同じ反応に関わっています。女性は月経による鉄損失があるため、レバー・赤身肉・小松菜・ひじきなどから意識的に鉄を補給することが大切です。

毎日の食卓に取り入れやすい「髪に嬉しい食材」

高価な食材を無理に買う必要はありません。普段の食事にプラスする感覚で取り入れられる身近な食材が数多くあります。卵はアミノ酸バランスが優れたタンパク源であり、大豆製品にはイソフラボンも含まれています。

青魚のEPA・DHAは血行を促す作用があるため、頭皮への栄養供給をサポートしてくれるでしょう。彩り豊かな野菜や果物で抗酸化ビタミンを摂ることも、コラーゲンの劣化を防ぐうえで有効です。

栄養素代表的な食材コラーゲンとの関係
グリシン鶏皮、ゼラチン、エビコラーゲンの主要構成アミノ酸
ビタミンCキウイ、パプリカ、柑橘類合成酵素の補因子
レバー、赤身肉、小松菜水酸化反応に関与
亜鉛牡蠣、牛肉、ナッツ類細胞分裂・タンパク合成を促進

コラーゲンサプリメントの選び方で迷ったら確認したいポイント

コラーゲンサプリメントは数多くの製品が市場に出回っており、どれを選べばよいか迷う方も多いでしょう。選択のヒントになるいくつかの視点を整理しましたので、参考にしてみてください。

低分子コラーゲンペプチドが注目される理由

コラーゲンは分子量が大きいため、そのままでは体に吸収されにくいという特徴があります。酵素処理によって低分子化されたコラーゲンペプチド(分子量が数千ダルトン以下)は、腸管から吸収されやすく、血中にジペプチドやトリペプチドとして検出されることが確認されています。

研究の多くは低分子コラーゲンペプチドを使用しており、実験で髪の成長に関するデータが得られているのもこのタイプが中心です。製品を選ぶ際は「低分子」「加水分解」などの表記を確認するとよいかもしれません。

原料は海洋由来と動物由来のどちらがよいのか

魚のウロコや皮から抽出した海洋由来コラーゲンと、牛や豚の骨・皮から抽出した動物由来コラーゲンが一般的です。2024年の毛包培養実験では、海洋由来のペプチドは毛の成長期を延長する作用が目立ち、牛由来のペプチドは毛包細胞の増加に優れる傾向が示されています。

  • 海洋由来コラーゲン:吸収性が比較的高く、アレルギーリスクが低め
  • 牛由来コラーゲン:アミノ酸組成がヒトのコラーゲンに近い
  • 豚由来コラーゲン:流通量が多く比較的安価

ビタミンCやその他の栄養素との併用を意識して

先述のとおり、コラーゲンの合成にはビタミンCが必要です。ビタミンCが配合されている製品を選ぶか、サプリメントとは別にビタミンCを食事で十分に摂ることを心がけましょう。

鉄やビオチン、亜鉛なども髪の健康に関わる栄養素です。これらを含む複合型サプリメントも増えていますが、過剰摂取のリスクもあるため、一日の推奨量を確認したうえで利用してください。

頭皮ケアとコラーゲン――外側からのアプローチで髪の土台を守ろう

体の内側からコラーゲンを補うだけでなく、頭皮を外側からいたわるケアも組み合わせることで、髪の成長環境をより良好に保てます。日々のちょっとした習慣が、数か月後の髪質に差をつけるかもしれません。

頭皮マッサージで血行を促すセルフケア

頭皮の血行が悪いと、毛乳頭細胞に届く栄養や酸素が不足し、髪の成長が鈍くなることがあります。シャンプー時に指の腹で頭皮全体をゆっくり揉みほぐすだけでも、血流の改善につながるでしょう。

力を入れすぎると頭皮を傷つける恐れがあるため、「気持ちいい」と感じる程度の圧で行ってください。1回3~5分程度を目安に、毎日の習慣にすると続けやすくなります。

紫外線から頭皮を守ることがコラーゲン維持につながる

紫外線はコラーゲンを分解する酵素(MMP)の活性を高め、真皮のコラーゲン線維を断片化させます。顔のUVケアには気を配っていても、頭皮の紫外線対策は盲点になりがちです。外出時には帽子や日傘を活用し、分け目を定期的に変えることで同じ部位への紫外線集中を避けるとよいでしょう。

シャンプー選びと洗い方のコツ

洗浄力の強いシャンプーを使い続けると頭皮の皮脂を必要以上に奪い、バリア機能が低下してしまいます。アミノ酸系の穏やかな洗浄成分を配合したシャンプーを選ぶと、頭皮への刺激を抑えやすいでしょう。

すすぎ残しは頭皮トラブルの大きな原因です。シャンプーの泡が完全に流れ落ちるまで、ぬるま湯でしっかりとすすいでください。ドライヤーは頭皮から20cm以上離し、温風と冷風を交互に使うと過度な乾燥を防げます。

ケア方法期待できる効果実践のポイント
頭皮マッサージ血行促進指の腹で優しく3~5分
UVケアコラーゲン分解の抑制帽子・日傘・分け目の変更
穏やかなシャンプーバリア機能の保護アミノ酸系洗浄成分を選ぶ
十分なすすぎ頭皮トラブル予防ぬるま湯で念入りに

二度と遠回りしたくない!コラーゲンと髪の悩みで医療機関に相談すべきタイミング

セルフケアや食事の見直しだけでは改善が難しい場合もあります。髪の悩みが深まる前に、専門の医療機関へ相談することが解決への近道です。

「いつもと違う」と感じたら早めの受診が安心

朝起きたときの枕に付く抜け毛の量が急に増えた、分け目が以前より広がった、シャワー時の抜け毛が明らかに多い――こうした変化に気づいたら、放置せず皮膚科や薄毛専門クリニックを受診してください。

  • 急激な抜け毛の増加(1日100本以上が目安)
  • 円形や帯状の脱毛斑
  • 頭皮のかゆみ・赤み・フケの急増
  • 産後半年以上経っても抜け毛が収まらない

女性の薄毛に多い原因と検査でわかること

女性の薄毛はびまん性脱毛症(FPHL)や休止期脱毛が代表的です。甲状腺機能の異常や鉄欠乏性貧血、膠原病(こうげんびょう)など、内科的な疾患が背景に隠れているケースも珍しくありません。血液検査やダーモスコピー(拡大鏡による頭皮観察)で原因を絞り込めることがあります。

サプリメントやセルフケアで対処しようとして受診が遅れると、治療の選択肢が狭まる場合もあるため、気になった段階での相談をおすすめします。

医療機関での治療とセルフケアは両立できる

医師から処方される外用薬や内服薬による治療と、コラーゲンの摂取や頭皮ケアといったセルフケアは対立するものではなく、併用が可能な場合がほとんどです。ただし、自己判断でサプリメントの量を増やしたり、複数の製品を併用したりするのは避け、必ず担当医に相談してください。

治療の経過を観察しながら食生活の改善や頭皮マッサージを続けることで、より良い結果が期待できるでしょう。「自分だけで抱え込まない」ことが、髪の悩みを乗り越える第一歩になります。

よくある質問

Q
コラーゲンを飲み始めてから髪への変化を実感するまでにどのくらいかかりますか?
A

髪の毛には成長サイクルがあり、頭皮環境の変化が髪の見た目に反映されるまでには一定の時間がかかります。臨床試験のデータでは、コラーゲンペプチドを継続的に摂取した場合、早い方で6週間、多くの方で12週間前後から髪の状態に変化が見られたと報告されています。

ただし、効果の感じ方には個人差があります。すぐに変化が現れないからといって焦る必要はなく、バランスのよい食事とあわせて3か月程度は継続してみることが目安になるでしょう。

Q
コラーゲンサプリメントに副作用や注意すべき点はありますか?
A

コラーゲンペプチドは食品由来の成分であり、通常の摂取量であれば重篤な副作用が報告されることはまれです。ただし、魚や牛・豚などの原料に対するアレルギーをお持ちの方は、原材料表示を必ず確認してください。

胃腸が弱い方は、まれにお腹の張りや軽い下痢を感じることがあります。持病がある方や妊娠中・授乳中の方は、使用前に担当医へ相談されることをおすすめします。

Q
コラーゲン配合のシャンプーを使えば頭皮のコラーゲンは増えますか?
A

コラーゲン配合シャンプーには保湿効果が期待できますが、外から塗布したコラーゲンが頭皮の真皮まで浸透してコラーゲン量を増やすという科学的な根拠は、現時点ではほとんどありません。

シャンプーに含まれるコラーゲンは髪の表面をコーティングし、手触りやツヤを改善する効果が中心と考えられています。頭皮のコラーゲンを本質的にケアするには、体の内側からのアプローチ――つまり食事やサプリメントによる摂取――を意識するほうが理にかなっているといえるでしょう。

Q
コラーゲンペプチドと一緒に摂るとよい栄養素は何ですか?
A

コラーゲンの体内合成を効率よく進めるためには、ビタミンCがもっとも重要なパートナーです。ビタミンCはコラーゲン合成に関わる酵素のはたらきを助け、この栄養素が足りないとコラーゲンが正しく形成されません。

加えて、鉄・亜鉛・ビオチンも髪の成長を支える栄養素として知られています。バランスの取れた食事を基本としながら、必要に応じてこれらの栄養素を意識的に補うとよいでしょう。サプリメントで複数の栄養素を摂る場合は、過剰摂取にならないよう推奨量を守ってください。

Q
コラーゲンペプチドは男性型脱毛症(AGA)にも効果がありますか?
A

男性型脱毛症はジヒドロテストステロン(DHT)というホルモンの作用が主な原因であり、コラーゲンペプチドの摂取だけで改善することは困難と考えられています。AGAの治療には、DHTの生成を抑える内服薬や血流を改善する外用薬など、医学的に有効性が確認された治療法を優先する必要があります。

一方で、頭皮環境を整えるという観点から、治療と併用する補助的な手段としてコラーゲンを摂取することは否定されていません。あくまで補助的な位置づけであることを理解したうえで、担当の医師と相談しながら取り入れてください。

参考にした論文