喘息(ぜんそく)の重症度と合併症をチェックし治療するために重要な5つの検査

 

気道とは、私たちの肺の中の空気の通り道です。

この気道で炎症が起こると、空気が肺の中に送り込めなくなり、呼吸が十分にできなくなってしまいます。

こうした炎症が原因で気道が狭くなってしまう病気が、「気管支喘息」(きかんしぜんそく)であり、

病気解説治らない息切れ・せき・たん。それってもしかして喘息かも?-まずは喘息の基礎知識を知っておこう-

で詳しく説明しています。

この気管支喘息は、息切れなどのつらい症状を引き起こし、時には命に関わる呼吸不全をもたらす危険な病気です。

しかし、早期に発見し治療を始めることで、うまく症状がコントロールできる疾患でもあります。

喘息がある場合、迅速な治療が大切です。

そのためには、自分が喘息かどうか、また喘息の重症度を把握することが重要です。

今回は、喘息の発見や評価に欠かせない問診、身体診察、検査についてわかりやすくご紹介します。

この情報を参考にして、喘息の早期発見と適切な治療法を見つけましょう。

 

 

1.喘息の可能性を示す症状の特徴と身体診察の重要性

病院での診察としては、まず「問診」が行われます。

患者さんが訴える症状が喘息によるものか、それとも他の原因によるものかを見極めるために、病気に関する質問がされます。

喘息の場合、以下のような特徴がある場合が多いです。

1. 症状が夜間や早朝に現れやすい、または悪化する

 ・喘息は、夜間や早朝に症状が出やすいという特徴があります。

 ・原因は明確でないものの、睡眠中の自律神経やホルモンの変化、体位などが関与しているとされています。

2.無症状期間をはさんで、発作的に症状が繰り返される

 ・喘息は、気道の狭窄が可逆性であるという特徴があります。

 ・つまり、炎症が治まると、気道が元の状態に戻ることができます。

 ・しかし、長期間炎症が続くと肺の構造が破壊され、元に戻らなくなることがあります。

3.運動後に症状が出現しやすい

 ・運動すると、呼吸回数が増えます。

 ・その結果、乾燥した空気が気道を冷やし、喘息発作が引き起こされることがあります。

 ・特に冬場の運動には注意が必要です。

4.アレルギー体質である

 ・喘息はアレルギーと関連が深く、ダニやハウスダストなどのアレルギーは喘息の診断に重要な情報となります。

5.気象や気温の変化で症状が悪化することがある

 ・冷たい空気が当たることで喘息発作が引き起こされることがあります。

 ・そのため、冬場に喘息で受診する人が多くなる傾向があります。

これらの質問を通じて、喘息の可能性を推定し、検査を行っていくことになります。

もし、これらの症状が当てはまる場合は、早めに受診しましょう。

 

 

これらの質問で喘息の可能性を推測し、続いて身体診察が行われます。

喘息の身体診察では、聴診が重要です。

喘息の発作時には、狭くなった気道を通る空気が「ひゅーひゅー」といった高い音を立てます。

これを医学用語でwheezes(ウィーズ)と言います。

非発作時でも強く息をすって強く吐くのを繰り返して、聴診器でやっと聞こえる場合もあります。

ただし、喘息には咳以外の症状が乏しい咳喘息というタイプもありますし、発作を起こしていない時にはwheezes(ウィーズ)が聞こえないこともあります。

そのため、wheezes(ウィーズ)がないからといって喘息でないとは言えません。

wheezes(ウィーズ)に加えて、発作時には、聴診器を当てなくても胸が「ぜーぜー」いっているのがわかる「喘鳴」という症状がでたり、たんが多くなったりします。

こうした形の問診や身体診察で喘息らしさを確認したら、続いて各種の検査を行なっていきます。

 

 

 

2.「呼吸機能検査」・「呼気NO検査」による喘息の確定診断と重症度チェック

①呼吸機能検査

喘息の検査方法について分かりやすく解説します。

まず、喘息の診断に欠かせない検査が、呼吸機能検査です。

この検査では、スパイロメーターという装置を使って、肺からどれだけ早く空気を吐き出せるかや、肺にどのくらいの空気を取り込めるかを調べます。

特に、喘息の場合は「1秒率」という項目に注目します。

1秒率とは、肺にいっぱい空気を吸い込んだ後、1秒間に何%を吐き出せるかを測定するものです。

通常、吸い込んだ空気の70%は1秒以内に吐き出せますが、喘息では気道が狭まるため、空気を吐き出すのに時間がかかります。

つまり、1秒率が70%を下回る場合、「閉塞性障害」の状態と考えられ、喘息の可能性が高くなります。

さらに、1秒率が70%を下回った場合には、「気道可逆性試験」という検査が行われます。

この検査もスパイロメーターを使って行われます。

まず、1秒率を普通に測定し、その後、喘息治療薬の気管支拡張薬(ベータ刺激薬)を吸入します。

喘息が原因で1秒率が低下している場合、ベータ刺激薬を吸入後に1秒率が改善することが多いのです。

つまり、ベータ刺激薬を吸った前後で1秒率に差がある場合、喘息の可能性が高いと言えます。

 

②呼気NO検査

呼気NO検査とは、呼気(吐いた息)中の一酸化窒素を測定する試験です。

この試験を通じて、喘息が引き起こす気道炎症の程度を調べることができます。

 

喘息患者さんの気道には炎症が起こり、サイトカインという物質が関与しています。

このサイトカインの作用により、気道上皮で一酸化窒素を生成する酵素が増加し、結果として呼気の一酸化窒素が増加します。

呼気NOの測定は、専用の測定器に息を吹き込むことで行います。

マウスピースを装着した状態で大きく息を吸い込み、最大限に吸い込んだら、一定の速度で息を吐きます。

測定器の画面を見ながら10秒間息を吐き続け、その後1分ほどで分析が完了します。

呼気NO検査で測定される数値、呼気中一酸化窒素分画(FENO)の基準値については、日本国内の4つの医療機関から健康な成人240人のデータをもとにした研究があります。

正常値は15ppbで、上限は37ppbとされています。

厚生労働省の研究によれば、喘息を疑う症状があり、FENOが22ppb以上であれば喘息の可能性が高く、37ppb以上であればほぼ確実に喘息と診断できるとのことです。

この検査は簡便で負担が少なく、喘息の診断に非常に役立ちます。

ただし、注意点として、ステロイドなどの炎症やアレルギー反応を抑える薬を使っている場合はFENOが低く出ることがあります。

また、喘息以外のアレルギー疾患でFENOが上昇する場合や、喫煙していたり検査前に飲食しているとFENOが実際より低く出ることがあります。

正確な検査結果を得るために、医師の指示に従って検査を受け、診断して貰うことが大事です。

Doctor and patient sitting in doctor’s office

 

3. 血液検査でわかる喘息の炎症とその原因

血液検査には様々な項目があり、日々多くの疾患の診断のために役立てられています。

喘息の診断にも血液検査は大きな役割を果たしています。

①好酸球

喘息の診断のために使用される血液検査項目の中で特に重要なものは、好酸球数です。

好酸球とは、白血球の一部で、寄生虫などから体を守る免疫機能を担う細胞です。

しかし、好酸球はアレルギー疾患における炎症の原因にもなってしまいます。

薬に対する過敏症、アレルギー性鼻炎、喘息などの疾患に関与しています。

好酸球が活性化すると、組織障害タンパクを放出し、アレルギー反応が起こります。

気道で好酸球が放出する組織障害タンパクによる炎症が起こると、気道が過敏になり、喘息症状や喘息発作を引き起こすことがあります。

気道に好酸球が存在するかどうかを確認する方法として、肺の一部を気管支鏡を使ってつまみ取り、顕微鏡で観察する生検がありますが、体に負担がかかります。

そこで、血液の中の好酸球が増えているかどうかを調べることで、気道に好酸球が多く存在するかどうかを推定する方法が採用されています。

 

②非特異的IgE(免疫グロブリンE)

IgEとは免疫グロブリンEというタンパク質で、体の中にアレルギーの原因となる物質が入ると、それに作用して体を守る機能を持っています。

IgEは肥満細胞と結合して存在し、アレルゲンが結合するとヒスタミンというアレルギー物質が放出されます。

このヒスタミンが様々なアレルギーの引き金になります。喘息もアレルギーに関連した疾患なので、全IgE値は診断の参考となります。

ただし、全IgEの値が高い場合でも、「アレルギー体質である」ということがわかるだけで、喘息かどうかを判断することはできません。

 

④特異的IgE

一方、特異的IgEは、特定のアレルゲンに反応するIgEの量を測定します。

例えば、ダニに反応するIgEはダニだけに反応し、スギ花粉に反応するIgEはスギ花粉だけに反応します。

この性質を利用して、患者さんの体にどのアレルゲンに反応するIgEが存在するかを調べることができ、喘息を悪化させる原因を遠ざけるための参考になります。

特定の環境や季節で喘息が悪化する人は、問診を手がかりにアレルゲンを調べることができます。

また、よくあるアレルゲン36種類の特異的IgEを網羅的に調べることができるMAST36という検査があり、複数の特異的IgEをまとめて受けることで、自分でも気づいていないアレルギーの存在に気づくこともあります。

ただし、特異的IgEが高い=アレルギーと診断するのは間違いであり、医師の総合的な診断が重要となります。

 

4. レントゲンとCTでは「所見がない」ことが重要

気管支喘息の場合、レントゲン画像では特徴的な異常がほとんど見られません。

喘息の原因である細い気管支の狭窄は、レントゲンでは捉えにくいためです。

したがって、呼吸が苦しい・咳が出るなどの症状があるものの、肺炎などを示唆する所見がない場合には、喘息が疑われることがあります。

重度の喘息の場合、肺が過膨張になって肺がいつもより明るく写ることがありますが、この所見は気づきにくく、異常なしとされることが多いです。

一方、CT検査ではレントゲンよりも細かく肺を観察できるため、以下のような異常を確認できることがあります。

①気管支の狭窄や拡張

炎症が起こり、気管支の壁が腫れて狭窄することが確認できます。

炎症が長期化し、気管支の構造が変わってしまうと、拡張が見られることもあります。

②粘液栓

炎症が起こると、気道への粘液の分泌が増加します。

これにより、細かい気道が詰まっているように見えることがあります。

③モザイク・パーフュージョン(mosaic perfusion)

気管支の狭窄などにより、「エア・トラッピング」(air trapping)と呼ばれる色の濃淡が認められる場合もあり、これを「モザイク・パーフュージョン」(mosaic perfusion)といいます。

全域にわたって肺野の濃度が低下する事もあります。

 

喘息は画像所見が現れにくい病気ですが、上記のような特徴がある場合もあります。

しかし、

・上気道閉塞

・気管支内病変(異物・腫瘍・狭窄)

・肺塞栓症

・好酸球性肺炎

などの病気が喘息のような症状・検査結果を伴うことがあります。

CTやレントゲン検査では、喘息を疑った患者さんに対して喘息以外の呼吸器疾患がないことを確認し、喘息の診断をより確定づけるために行われることが重要です。

 

 

5.まとめ

喘息の症状には以下の特徴があります。

  • 夜間や早朝に症状が出やすい
  • 無症状期間を挟んで症状が発作的に繰り返される
  • 運動後に症状が出現しやすい
  • アレルギー体質である
  • 気象や気温の変化で症状が悪化することがある

これらの症状が当てはまる場合、早めに受診しましょう。

問診を通じて喘息の可能性を推定し、次に身体診察が行われます。

喘息の身体診察では、聴診が重要です。喘息発作時には「ウィーズ」という高い音が聞こえますが、発作を起こしていない時にはウィーズが聞こえないこともあります。

喘息の確定診断と重症度チェックについては、まず呼吸機能検査と呼気NO検査が行われます。

呼吸機能検査では、スパイロメーターを使って、1秒率を測定します。

1秒率が70%を下回る場合、喘息の可能性が高くなります。

また、呼気NO検査では、呼気中の一酸化窒素を測定し、喘息が引き起こす気道炎症の程度を調べます。

FENO(呼気中一酸化窒素分画)が22ppb以上であれば喘息の可能性が高く、37ppb以上であればほぼ確実に喘息と診断できます。

ただし、ステロイドなどの薬を使っている場合や、喫煙・飲食の影響でFENOが正確でない場合があります。

また、血液検査も喘息の診断に重要な役割を果たしています。

主な検査項目には好酸球数、非特異的IgE、特異的IgEがあります。

好酸球はアレルギー疾患の炎症の原因となり、喘息症状や発作を引き起こすことがあります。

非特異的IgEはアレルギー体質の判断に役立ちますが、喘息かどうかは判断できません。

特異的IgEは特定のアレルゲンに反応し、喘息を悪化させる原因を特定する参考になります。

レントゲンやCT検査では喘息の所見がほとんど見られませんが、重度の喘息では肺が過膨張になることがあります。

CTでは気管支の狭窄や拡張、粘液栓、モザイク・パーフュージョンなどの異常を確認できることがあります。

しかし、これらの画像検査では喘息以外の呼吸器疾患がないことを確認することが重要です。

喘息の正確な診断には呼吸機能検査・採血などの検査が必要であり、画像検査は呼吸器科専門医・放射線科診断専門医の読影・診断されていることが大切なため、最終的にはちゃんとした呼吸器科・呼吸器内科の医療機関で診て貰うべきですが、まずはかかりつけ医や近くのクリニック・病院を受診して相談してみることが大事です。

6.参考文献

  1. 一般社団法人 日本呼吸器学会ホームページQ&A

https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q12.html

2. 内科 Volume 125, Issue 6, 1371 – 1373 (2020)

3. 喘息予防・管理ガイドライン2021

4. Matsunaga K, Hirano T, Kawayama T, Tsuburai T, Nagase H, Aizawa H, Akiyama K, Ohta K, Ichinose M. Reference ranges for exhaled nitric oxide fraction in healthy Japanese adult population. Allergol Int. 2010 Dec;59(4):363-7.

5. 厚生労働科学研究「気道炎症モニタリングの一般臨床応用化:新しい喘息管理目標の確立に関する研究」

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