がんと自己免疫、そして免疫療法の実際の意味

外来担当医の清水です。

こんにちは。外来担当医の清水です。

私事ですが、最近肺癌学会という日本全国から肺がんに携わる医療者が集まる会に参加してきました。

コロナ禍での開催でしたので、感染対策が至る所に施されており、いつもとは少々違う雰囲気の中でしたが、その中でも最新のがんの勉強をすることができました。

最近肺がんをはじめとするがん治療において、免疫療法という新しい概念が標準治療になりつつあります。

今回はがんと免疫治療についてのお話です。

まず自己免疫とは、細菌やウイルスなどの「異物」が体に入ってくるのを防いだり、排除したりして体を守る力のことです。免疫はいつも同じ状態ではなく、弱まったり、異物を排除するために強まったりしています。

このとき、免疫細胞と呼ばれる血液中の白血球などが中心的な役割を果たします。このうち「T細胞(Tリンパ球)」には、がん細胞を攻撃する性質があり、免疫療法で重要な役割を持っています。

本来であれば、私たちはT細胞によってがんを排除することができますが、T細胞が弱まったり、がんによってブレーキをかけられたりしていると免疫が弱まり、がんにかかってしまうのです。

免疫療法とは弱まったT細胞を強くする、がんによってかけられたブレーキを外す、などによって自己免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。

前者の免疫を強くする治療方法としては、がんペプチドワクチンや樹状細胞ワクチンを用いる治療などが有名ですが、現時点で保険適応にはなっておらず、効果が証明されているものではありません。

現在のところ効果が証明された免疫療法のほとんどが後者の、「がんによってかけられたブレーキを外す」=「免疫チェックポイント阻害療法」です。

オプジーボ.jp 患者様向け小冊子より引用

免疫チェックポイント阻害剤を使用した治療なので、薬物療法になります。

現在保険適応になっている免疫チェックポイント阻害剤には数種類あり、オプジーボは2018年に京都大学特別教授の本庶佑さんがノーベル医学・生理学賞に選ばれたことで話題になったため、聞かれたことがある方も多いと思います。

オプジーボ.jp 患者様向け小冊子より引用

一昔前までは免疫療法というと何か怪しい治療というイメージがありましたが、現在は肺癌や悪性黒色腫、胃癌、頭頸部癌などさまざまながんで実際に使用されており、その効果も証明されています。

勿論効果がある治療法は人それぞれですので、以前より行われている抗がん剤治療と併せて、どんどんこれからも治療の幅は広がってくるように思います。

これまでのお話はがんになってしまった場合の治療についてでしたが、がんに限らず免疫機能を高めることは病原菌などから身体を守り、健康を維持するためには大切です。

では免疫力を高めるにはどのようなことに気をつければ良いのでしょうか。

世の中には免疫力を高めるサプリメント等の情報があふれていますが、一般的に免疫力を高めるためには、ストレスを避け、規則正しい生活習慣と栄養バランスの良い食習慣が必要と言われています。

免疫については今後さらに解明されることが多い領域であると思います。どうやら特定の食品や薬をとれば良いというものではなさそうです。

免疫システムは自律神経と深い関わりがあると言われ、ストレスによって機能が低下するとされます。

自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経はおもに日中、活動している時に優位になります。全身の活動力を高める神経で、血圧や血糖を上げ、血液を筋肉や脳に集める働きがあります。

副交感神経はおもに夜間、リラックスしているときに優位に働きます。身体を回復させる神経で、内臓の機能を高める、免疫機能を正常にする、などの作用があります。

ストレスが強すぎると交感神経ばかりが活発になってしまい、免疫にはやや不利になります。1日のうちに1度は仕事や家事などご自身のストレスになることから解放される時間をとるようにしましょう。

また最近腸内環境を整えることが免疫力を高めることがわかってきており、善玉菌を増やす食事などが注目されています。

筆者も食べることに大変興味がありますので、大変注目している分野であります。「腸活」についてはまた詳しくお話させて頂きますね。

話が大幅に逸れてしまいましたが、今回はがんの免疫療法についてご紹介させていただきました。

がんの予防も含め、細菌やウイルスなどの外敵に負けないように、バランスの摂れた食事、十分な睡眠、適度な運動など、規則正しい生活を心がけて体調を整えましょう。

healthy living concept hand drawing on blackboard

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